攘夷派で伍の御題



「……大義…?」


坂本の言葉を繰り返すと、彼からは突然豪快な笑い声が返ってきた。


「目先のもんばっか切りまくっても何も変わらんかったきに。そうすっともっと先の事ば考えていかなければならんち。今を変えて将来を変えるんじゃのーて、未来を変えて将来を変えるんじゃ。戦争の無い、みんなが笑って暮らす、人間と天人が共存できる国にするんじゃ」


言い終えると、それはそれは楽しそうに娘に微笑みかけるのだった。


「それで、宇宙ば行くと…?」

「そうじゃ」


…そうか。

何も考えてないのは自分だった。目で見たり耳で聞いたことしか受け入れずにいて真髄を知ろうとしなかった。
この男がどれだけの苦渋の思いで仲間を戦場に残し、思想を貫こうとしたのか。
勝手な思い込みで坂本という男を勘違いしていた…


「……すまぬ…」

「あ?」


娘は視線を自分の膝に落とし小さく呟いた。


「…すまなかったきに…」


例えようの無い罪悪感。
その気持ちの大きさが喉をきつく絞め、声は絞り出すようにしか出てこなかった。


「アッハッハ!なんじゃ?どーしておんしゃさっきから謝っとんのじゃ」


坂本は娘の言葉をしっかり拾い取っていた。
けれども彼女の謝罪の意味が分かっているのか、分かっていないのか。得意の大口で笑い飛ばしている。


「……」


娘はそんな彼に心底安堵感を与えられたのだった。





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