攘夷派で伍の御題





「…おーーーいッッ!坂本さんとこの御子息が帰ってこられよったァーー!!」



ある広い城下町。
多くの軒が連なる最も大きな通りに、一人の男が戻ってきた。



「おぉおお!!みんな元気にしちょったか〜?」


「辰馬様だぁぁぁ!」



表通りを多くの人が駆けていく様子を、船舶部品を扱う小さな商店の老主人とその孫娘が、修理の手を休めて眺めていた。


「…おんしゃ行かぇいがか?坂本様が帰ってきよったきに、みんな迎えに行ったぜよ」


立ち上がった老主人は未だ手を動かし続ける孫を振り返る。だがしかし、

「…わしは行かん。じいちゃん行ってやればよか〜」


その娘は視線を自分の手元に戻して答えた。


「おんしゃァそげん無愛想ばっかゆうちょると嫁の貰い手もつかんきにィ…店番頼むぜよ」


工具を置いて軒を出ていった祖父を孫娘は黙って見送った。



――わしァ あの男嫌いじゃ。
いつも笑ってばっかで何にも考えとらんのじゃ。
大層な家に生まれて今まで何不自由無く、世の事何も知らん。
空っぽな奴じゃ…


店に一人になった娘はそのまま黙々と作業を進めた。


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