攘夷派で伍の御題
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透き通るような空に白い雲が浮かんでいる。
涼しい風に唯一、陽の光が肌に暖かかった。



終戦から数ヵ月が経ち、村にも人々の賑やかな笑い声が戻ってきた。
小さなこの村には、天人文化の影響による人々の生活の変化はさほど見られない。

一人静かに暮らす女の生活も以前と変わらず。


そして、銀髪の侍が訪れてきた時と同じ季節がまた巡ってきていた。

裏山の木々は色付き始め、草むらをバッタやトンボたちが飛び交う。小屋の庭の柿も実を膨らませていた。


女は井戸の水を汲み上げ花咲く庭に撒いた。近年までは寂しかった秋桜が今年は見事に咲き乱れ、女は毎日ほっと息をつくのだった。



―― ドン ドン


そんなとき戸が叩かれる音が聞こえて、女は小樽を石積みの井戸口に置いた。

戦争中それまであまり表に出なかった村の人々が、終戦後は互いの交流が盛んになり女の家にも訪問者がよく出入りするようになっていた。


「鍛冶屋の奥さんかしら」


捲くった袖を降ろしながら、表口へ駆けた。


「はいっ、こっちです――」


小屋の影から顔を出し戸口を見て、女は息を呑んだ。

振り返る訪問者に、言葉を失ってしまった。



「どーもォ。万事屋でーす」


一年前とは全く違う姿だったが、
その ヘラッと手のひらを向けて笑うところと、光に輝く銀髪は、

忘れもしなかった。



「お礼の気持ちを届けに参りましたァ♪」





見上げた空


暗い曇天ではなく
今度はこの見事な青空をあなたと見上げることができて

よかった








fin...




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あきゅろす。
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