攘夷派で伍の御題
11
金属音がぶつかり合う音が耳を突く。
それに時たま銀髪の侍が歯を食いしばって漏らす声も混じった。
しかしやがて彼のスピードが天人の動きをも上回り始めた。相手の図体と武器の大きさを逆手に取り、白夜叉は鋭く攻めていった。
身体が悲鳴をあげているのを必死に堪えながらも。
――ガキャンンッッ
とうとう天人の動きが止まった。男はその瞬間を逃すわけがない。
女も、握る手に力をいれて男の振り降ろす刀筋を見つめた。
――ザザッ
「――なッ!?」
「旧きは必ずや消滅せし」
空気が裂けるような稲妻の音が、同時に辺りを眩しく照らした。
特に女の目には、侍が三本の斬撃を受けるところを はっきりと…
「―――…」
時が止まったのか、目の前の戦いが制止したのか。
女はたった一人の侍を同時に斬りつけた、
三人の天人の黄色く光る歯牙を見た。
白夜叉と刀を交えていた天人の両脇からもう二人の天人が飛び出してきたのだった。
「―――…」
侍の髪の毛が稲妻に反射し、白銀に光り揺らめくのを見た。
「―――…」
その他は固く目を閉じて地にうつ向き、女は自ら見ることを拒んだ。
自分が信じることで少しでも彼の助けになれば、と強く願っていた。無駄になるはずない、とついには強く彼を信じることができた。
彼は私を護るためには負けられねぇ、と言ってくれた…
「……なん…で…」
私の願力では、力不足だったのだ…
――ザシュアァァァァッ
ドシャァ…
女が顔を地に伏せてからは、さらに刀が物を斬る音と物が地面に崩れる音が耳に入ってくるのみだった。
「―――ッ…」
女は自分を責めた。
そんなことをしても何にもならないというのを分かってはいても、そう強く自責する術しか知らなかった。
あれだけ強く想いを告げてくれた男に、素直に応えてあげることができなかった力不足な自分を……
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