攘夷派で伍の御題
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「―――///」
女は思わず口元で両手を握りしめた。その手はガタガタと震えいた。
恐怖心や悲哀の震えではなく、全く逆の…
「――っ…///」
…なぜ男の人はみんな泥や血にまみれて、傷だらけになって、そんなに苦しい思いをたくさんしてまで……
――ガキィィィィンッ
「おかしいねェ?武士がそんな欲張りでいいのかなァ?」
「…ヘヘッ…生活は貧乏でも思想はでっかく持っとくもんなんだよ」
先頭に立って戸を叩いてきた天人が、銀髪の侍の刀筋を止めた。図体のあるその天人に、侍は少しずつ押されている。
「白夜叉とやら…女というのは怖い。男を弱くするのだ、知ってるか?」
鋭い金属音を立て、互いに一度距離を取った。
「その若さで女を覚えると足元掬われるのだ、その事しかとその小さい脳に留めておけ」
『白夜叉』…
それはこの男の名前なんだろうか、と女は名を繰り返した。
その声が聞こえたのか、白夜叉と呼ばれた侍はフッ と小さく笑んだ。そして敵に視線を戻すと、
「ご忠告どーも。でも悪ィな。俺ァ弱くなる気なんかコレッぽちもねぇよ。こいつ護るためにァ負けられねぇよッ――」
大きく地面を蹴り、天人に向かって刀を振り落とした。
それから白夜叉とその天人の斬り合いは目にも止まらぬ速さで繰り広げられた。
いつの間にか鳴り始めた雷鳴は、ただその勝負の行く先を見つめることしかできない女にとっては、あまりにも重すぎる緊張感を与えた。
「―――ッ」
男の戦いに声も涙も出ず、ただ茫然としてしまうのだった。
俺の信念は そこにいる女を護ることだ
男の言葉を、自分に向けた眼差しを信用すべきなのに、新たに傷を作りながら息を荒げながら戦う姿を見ると、どうしても戦いの行く末を心配し、最悪な事態を考えてしまう自分がとてつもなく情けなかった。
兄のことについてもそうだ。
どこかでわずかでも望みを持ちたがっているのに、無理に割りきろうとしている自分がいる。
お前さんが信用してやらなくて、誰がお兄さんの帰りを信じるんだよ
あの人も、そう言った。
今は……、
そうよね、私があなたを信じます。
だからきっと、
きっと勝って……
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