色は匂へど散りぬるを
3
「…真選組の屯所って広くてさぁ、なかなか捕まらないのよ。ほらさ、一匹見ると50匹いるとか言うじゃない。あの広さは倍の倍いるよきっと。だからちょっとここにいさせてもらおうと思ったの。ここなら二階だから大丈夫かと思ったしすぐ捕まるだろうし」
「つまり狭いって言いてぇんだろ」
「神楽ちゃんもいるし」
「エッヘン」
「いや、なんで威張ってんの」
ごんみ(名)の目線が自分に向かない事にイラつきながら銀時は言う。
「おめーさァ、江戸に住むってのはなァ、ゴキブリと同じ便器に座るのと同じなんだよ」
「あたし便器に座らないもん。しゃがむもん」
「そんなこと聞いてんじゃねーよ。そりゃな、お前のようなお城生活にゃ害虫なんて無縁だろうがよ。ここは江戸だ、我慢しろ。季節変わりゃすぐどっか行く」
「知らないの銀?ゴキブリはねぇ、1つの卵の中に5000匹の赤子がいるのよ、」
「いくらなんでも桁が違う気がしますごんみ(名)さん」
「いえ、常に問題というのは最悪を考えておくものですよ。大変なことになる前に仕留めないと新八くん!」
ごんみ(名)の目は鋭く、動いたり止まったりしている。その視線だけで標的を焼き殺してしまうようである。
「だから…ゴメンね銀」
「ゴメンて態度じゃねーだろソレ、何でそんな遠くにいんの」
「…別にわざと銀を叩こうとしたわけじゃないのよ、あのクソムシがあんたの顔の下に…」
「明らか悪びれてる態度じゃねーよな、何でこっち見ねーの、俺の顔にエキスついたから?」
「・・・ゴメンてば。…近寄らないで」
「オイ今ボソッと何つった。何だその手」
二人の間の机の上に、くたびれた愛読書がある。
「あーあ。おめーワニワニパニックみてぇにジャンプ使いやがってコノヤロー。コレ昨日出たやつなんだぜ、もう一回読み返そうとしたやつだったんだぜオイ」
「じゃあさ、あたし読んだから教えてあげるねっ事細かに」
「いらねーよ!」
酔いは冷めた。腹が立つくらいアルコールがぶっ飛んでいった。
帰宅直後の一発はかったるかった頭部を目覚めさせた。強烈だった。初めてだぜこんな二日酔い冷ましコノヤロー。
「………」
「…オイ」
「…(ソロリとジャンプを手に取る)」
「だからジャンプやめろっつの」
「じゃあ…ソレ(木刀を貸せと手招き)」
「ふざけんなおめー見てみろこの家の破損!ゴキジェット使えや」
「嫌だあんなよく分かんない毒煙」
「まともに吸わなきゃ人間は死なねーよ」
「吸ったらどーすんのよ」
「防毒マスクでも買ってくればいいじゃねー…」
ズガガガガン!
「撃ち取りやした総督!」
「よくやりました隊長!」
「てめーら戦場行け!!」
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