色は匂へど散りぬるを








『ごんみ(名)様っ!』

『早く、こちらへ!ここから逃げて!』

『あんな不当な天人の言いなりになんかなる必要ありません!私たちの事ならご心配なく…!!』

『あなたまでお父上様と同じようなことにはさせたくないんです、どうか…ごんみ(名)様!』





『貴女が逃げ出したところで、残された民はどうするのです。この国は姫のお返事次第で良くも悪くもなる。はいと一言、言えば良いのです…フフフ…』







「―― はっっ…」



障子を透かして、夏の朝陽が和室に満ちていた。


……夢、か…


「…嫌だ」

薄い掛け布団を頭から被った。布団の中は嫌な寝汗のせいで若干ひんやりとしていた。

国を出てから、毎日同じ夢だ。あたしの胸の奥底に沈めておきたい不安をわざと掻き立たせるような。それも見てきたこと、これから起こりそうなことまでもまるでまさに今現に起きているかのように鮮明に。
ぎゅうっと膝を抱えた。



――トン トン

「ごんみ(名)〜、起きてるかィ?朝飯できてやすぜ〜」

「…、ありがと、今行く」


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あきゅろす。
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