もしもペリーじゃなかったら






「ななしの(氏)ごんこ(名)さんね?食事系の仕事はしたことある?」

「はい、何回か」

「じゃぁある程度の要領は分かるわね?もし大丈夫なら今日から入ってもらっていいかしら?早速で悪いんだけど、ちょっと人手が足りなくて…」

「あ、喜んで」

「本当?じゃぁ簡単なことをお願いするわ。すぐ制服を用意するから、ちょっと待っててね」


控え室で面接を終え、店長から制服を渡された。カフェとかレストランで働いたことはあったけれど、女中のような格好をしてたのはこれが初めてだった。

昨日の今日あたしは仕事先を決めて早々と面接を通り採用が決まった。新八くんの言った通りだった。
銀さんがあんみつがおいしいと言っていたこの大きな構えのお店、庭も付いていたりしてかなり洒落ている、わびさび溢れる料理処『山吹亭』。


今の時刻はお昼を回った頃。料亭はちょっと身分が高そうな人や天人でカウンター席以外の個室やテーブル席はほぼ満員になった。店員がお盆やら伝票やらを持って忙しそうに廊下を駆け回っている。


「――おしっ!出来た」


制服を着るのに少し時間が掛かったけれど、何とか準備して控え室を出た。


「――あら、新しい子?」


あたしより少し年上ぐらいの従業員と会ったのであたしは会釈して名乗った。


「よろしくお願いします。ななしの(氏)ごんこ(名)です」


するとその人はあたしの襟元をしっかり直してくれて、

「ごんこ(名)ちゃん、頑張ろうね。何でも聞いてね」

とにこっと言って去っていった。


「ななしの(氏)さーん?準備できた?二十三番席にお茶出しに行ってきてくれる?一番南の奥の席〜」


はーい、と返事してあたしは言われたようにお茶出しに取り掛かった。



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あきゅろす。
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