もしもペリーじゃなかったら
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「こんにちはー」
「おや、ごんこ(名)ちゃん。今日はお休み?」
「はい。お登勢さんコレ、商店街の評判の和菓子屋さん。みなさんで召し上がってください」
「何だい、気ィ使わんどいてくれ。ごんこ(名)ちゃん分はちゃんと家賃もらってんだからね。まさかコレで私の機嫌でも取るように天然パーマに頼まれたのかィ」
ありがとね、と言ってお登勢さんは受け取ってくれた。銀さんは相変わらずご滞納のようだ。今日の仕事が無事終わればとりあえず楽になるとは思うけど。
「しかし久々だね。朝から晩まで働きづめじゃないのさあんた。銀時も見習ってほしいよまったく」
「今日はみんな裁判のお仕事ですよ」
「何だィ、弁護人でもやるってのかィアイツが」
「アノダメ人間ニヤラセルナンテチャンチャラオカシイナ。人選間違ッタナ。オ気ノ毒ニ」
「そうでしょうか。銀時様の持ち合わせるずる賢さと饒舌さと人情観だと私の計算では58%の確率で勝訴を勝ち取れます」
「何ダッテ〜?」
「さすがたまさん!すごくギリギリに予測当ててるっ」
「勝テルワケナイ!ソモソモプロノ弁護士相手ニ渡リ合オウナンテ身ノ程知ラズモ大概ニシロナンダヨ」
「いえ、私の計算は間違いありません」
「何ガ計算ダ。サイボーグ女メ」
「ああ、そうだごんこ(名)ちゃん。まだ先の話だけど、あんた盆休みとか国に帰るのかィ?」
「いえ、特に予定なく」
「帰らないのかィ?親御さんに会いに」
親 …――
「…、こっちでしばらく稼ぐって言ってあるので、少なくとも年内は江戸にいようと思ってて」
「そうかィ。もしいるなら一日二日手伝ってほしい事があるんだよ」
歌舞伎町で盆踊り大会があるという。スナックお登勢もスポンサーで酒を振る舞うことになっていて、その座敷に酌をして回ってくれとのこと。使ってもらえるなら、喜んで。
…だけどもう、嘘をつくのには疲れた。
「ワン」
「定春?」
一階をおいとまして二階に上がろうとすると、定春が横でいきなり一吠えした。彼が見上げる先、万事屋銀ちゃんの玄関口から先客がこちらに顔を覗かせた。
「おおーこないだの娘」
「ゲッ」
「オイ聞こえたぞ」
卑猥な触覚がピンと揺れた。
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