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Novel
しもやけハート(こへ滝)


バレーボール、塹壕掘り、裏裏山までマラソン、…これで今日の委員会はようやく、全て終わり。
ぜえはあと息をついたり、ぐったりしている後輩達を抱えて私はほう、とひとつ息を吐くと、ふわふわと白い息が、つんと澄んだ空に溶けていった。
もう秋の終わりも近く、日増しに寒さはだんだんと強くなっていく。

「大分、寒くなりましたね」

先頭を切って疾走していたにも関わらず、呼吸一つ乱れていない七松先輩に声を掛ける。

「そうだなあ、裏裏山は雪が深くなるし、雪が降ってしまったらここにはあまり来れなくなる」

そしたら雪合戦だなあ、とははっと笑った先輩の息も白い。思わず見とれていると、

「あ!」

「な、何ですか!?」

前にいた七松先輩が駆け寄ってきて、私の前でストップ。

「滝ちゃん、顔真っ赤だ!」

「え、?」

上手く反応する間もなく、ふわっと大きな手の平が私の頬を包んだ。
真っ赤な手から、一瞬の冷たさと同時にじんわりと暖かさが広がる。

「な、なまつせんぱ…い、」

何するんですか、ともごもご呟いた言葉は、先輩に届く前に白い息になって空に消えた。

「滝ちゃんは色が白いからなあ、すごく綺麗!」

「っ」

にっと笑って満足気に頷くと、先輩はぱっと踵を返して。

「さあ、すぐにもっと寒くなるし、はやく忍術学園に帰ろう!」

離れていってしまった暖かさに名残惜しさを感じつつ、私は慌ててハイと頷く。その声も暗くなりはじめた空にあっけなく吸い込まれてしまったけれど。


そして、帰りもマラソンだ!いけいけどんどーん!と走り出した七松先輩の声を聞いて、さあもうひと頑張りだと、ぐったりしている後輩に声を掛ける。
さっきよりも更に赤くなった頬は、夕日のせいだと言い張って、私も慌てて先輩を追って駆け出した。



(頬が赤いのは寒さのせいと、夕日のせいと、それと、)



おわり!


お題でした。
修羅場1567さまからお借りしました。



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