[通常モード] [URL送信]
ロマンチスト・エゴイスト


「俺さ、お前を守ってかっこよく死にたい。」


そうやって心にもない、夢見る乙女よりも幼稚な考えを言ってみた。

全く、随分とロマンチストな死神だぜ。


ヒイロは俺に目を向けることすらもせず、本のページをめくりながら俺の話を聞いている。


「随分とロマンチストで嘘つきな死神だな。」

あ、思ってることかぶった。
しかもバレてる。
流石ヒイロ。


「…戦場では一瞬の隙が命取りだ。」

「うん知ってる。」

「どんな私情であろうが、所詮は私情であり、不要なものにしかならない。」

「うん知ってる。」


大切な人のため?
お国のため?
自分の名誉のため?

そんなのは言い訳で、誰もが持ってるエゴにしか過ぎない。


「誰かに守られるということは危ないと相手に認識させてしまうからに他ならない。
つまりは自己責任だ。」

「うん。」

「そんな奴のために、何故自分の身を犠牲にしてまで守らねばならないんだ。」

「そりゃごもっともだな。」


俺は無邪気に笑ってみせた。

これが作り物の笑顔だってことは、ヒイロにもうバレているのかもしれないが。


「じゃあ、守る相手が俺だとしたら?」

「例外なく切り捨てる。」

「即答かよ、ひっでーな」


これも嘘。
本当は安心してんだ。

いくら死神でも、お前を地獄へ案内するのは嫌だからな。














…なんて昔の思い出に浸りながら、俺を庇って今はもう動かないヒイロの死体を見つめた。


「…この嘘つき。大嫌いだ。死ね。」

あ、もう死んでるんだった。

俺は涙を流すこともなく、ただ無表情で、さっきまでヒイロだった物体を見つめた。


最期の最期まで嘘をつき、守ることに意味を成さないと言ったのに、俺を庇って死んだロマンチスト。

でも残念だったな。

生憎俺はエゴイストでね。
お前の思い通りになんかさせてやんない。

俺に嘘をついた罰だ。


俺はヒイロの命を奪ったピストルを手に持って、自分の頭を撃った。





[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!