01.必然の出逢い 人はそれぞれ願いを持つもの。 その願いを叶える為に、人は探し求め、時には何かを犠牲にする。 彼らもまた願いを叶える為に次元を超えてきた。 少女を助ける為にやって来た少年。 無理矢理ここに送られて来た者もあれば、自ら望んで来た者もいる。 やって来る者も理由もそれぞれ。しかし、願いがある。それは同じ。 雨の降る中、願いを求める者がここに集った。相応の対価を払えば、願いを叶えてくれるこの場所に。 そして、もう一人 「来たわね」 ただ一人、この雨の中濡れていない女性が口を開いた。 一同の視線は、侑子が見つめる先に集まる。しかし、そこには何もない。 「おい、何もないじゃねぇーか」 今度は苛ついた様子の黒鋼に視線が移る。 「…いや、来る」 しかし、それも束の間。 ファイによって戻される。 何もなかった場所にキキィィィと甲高い音ととも風が巻き起こり、空間が歪む。それは彼らが次元を超えていた時と似ている。 「そう、あなたが来たの…」 「お久し振りです、侑子さん。お元気でしたか?」 「ええ。ユナは元気にしていたかしら?」 「―…」 そこから現れたのは、藍色の長い髪を揺らす女性。彼女は問いに答えなかった。 「なんだ、あれは」 訝しげに黒鋼の鋭く紅い瞳が赤を捉える。 それは彼女のコートに付いた血。しかし、普通に立っていられる様子からして、その血は彼女のものではない。そのことが見て取れる。 その時、黒鋼以外にもユナに疑いの眼差しを向けている者がいた。 だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。 「侑子さん、叶えたい願いがあります」 「あなたの願いは?」 「ある人を探す為に異世界に行きたい」 その声音には憎悪がこもっている。 「そう…、それがあなたの願い」 切なげに伏せられる瞳。 「しかし、願いは難題ね。四人一緒に対価を払うならぎりぎりって所かしら」 「なに言ってんだてめー?」 「願いを叶えてもらう為には対価を払わなければいけないんです。この世界で侑子さん以外に異世界へ人を渡せる者はいないから」 そう、それは事実。 侑子以外に強い魔力を持つ者はこの世界にはいない。 男にも理解出来るように分かりやすく説明する。 「んな、デタラメっ!」 「本当だぞー」 殴りかかって来そうな彼を柔らかい声が止めた。へにゃと笑いながら、肯定を示す。 目的は違うけど手段は一緒。 ようは違う次元、異世界に行きたい。 だから、侑子は4人一緒に対価を払わせるのである。 「絶対『呪』を解かせたら、また戻って来て取り返すからな!」 叫びながらも、忍者は大切な刀を差し出す。 この異世界から元の世界に行きたい、その願いを叶える為に。 「仕方ないですねぇ」 元の世界へ戻りたくないから他の世界に行きたい。 その為に魔術師はイレズミを支払う。 「さくらは絶対に死なせない!」 その子の飛び散った記憶を集める為に色んな世界に行きたい。 その為に、強い覚悟を持った少年は関係性を差し出す。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |