02.
「ところでモコナ。この世界に彼女…サクラちゃんの羽根はありそうなの?」
「…ある。まだずっと遠いけど、この国にある」
目を瞑り、羽根の波動を感じ取る。
「探すか、羽根を」
「はい!」
空汰の問いに強い意志で答える小狼。
「他のも同じ意見か?」
「とりあえずーー」
「ええ」
「移動したいって言やするのかよ、その白いのは」
「しない。モコナ、羽根が見つかるまでここにいる」
ムスッとする黒鋼。
「ありがとう、モコナ」
「よっしゃ。んじゃ、この世界におるうちはわいが面倒みたる!侑子さんには借りがあるさかいな」
嵐の手を握る空汰。
彼らも侑子の世話になったことがあるようだ。
二人で経営しているこの下宿の部屋を貸してくれるらしい。
空汰たちのおかげで宿に困ることはなくなった。
「そろそろ、寝んとな。部屋に案内するで。おっと、ファイと黒鋼は同室な」
「はーい」
「なんだとー!?」
嵐から一人部屋に案内されようとしていたユナが立ち止まる。
「良かったら、部屋代わりましょうか?」
嫌そうにしている黒鋼に提案してみる。
黒鋼はユナを上から下へと眺めた。
目の前にはどう見ても女のユナ。
女に部屋を譲らせていいものか。
むしろ、男と女が同室というのはいかがなものだろう。
本人が提案しているとはいえ、そこは否定しておくべきだ。
何かあってからでは、責任は取れない。
「ユナちゃんなら、同室大歓迎だよー」
ファイは両手を広げ、ユナに抱き着こうとしている。
「…いや、いい」
そんな彼の襟を引っ張り、自分たちが案内された部屋へと連れて行く。
「黒様、ひどーい」
黒鋼なりに気を遣ったようである。
一方、小狼はサクラの側にいる。
やはり、彼女が心配なのだろう。
モコナも彼らと一緒に寝ると言っていた。
その為、二人と一匹は先程の部屋で寝泊まりするのであろう。
◇◇◇◇◇
ユナは今、部屋に向かうべく嵐の後をついて歩いていた。
「…嵐さんは、巫女だったと言っていましたよね?それなら私が……、何か分かりますか?」
「ユナさん、貴女は力を失ってはいませんね?弱くなったり、強くなったりと不安定ではありますが、魔力を感じます」
(さすがだ)
思わず感心してしまう。
「力の源であったものを対価として払ってしまったんで、力が上手くコントロール出来ないんですよ」
「それでは、その体は…?」
「上手に出来ているでしょう?」
意味ありげに小さく笑みを浮かべる。
それは自嘲にも似ていた。
嵐はそれに対し、口を開こうとするが遮られる。
「ここですか?」
気付けば、部屋の前についていた。
「ええ、自由に使って下さい」
「ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」
ユナはまるでそれ以上、嵐に踏み込まれるのを防ぐかのように、足早に部屋へ入って行ってしまった。
「貴女は…、生きているのですか?」
嵐の声が人のいない廊下にポツリと漏れる。
(ーー戦うチカラ)
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