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01.戦うチカラ



ここ、阪神共和国は島国。
四季があり、他国と戦争もしておらず、移動手段もたくさんあり、環境に恵まれている。

島の形は虎のよう。
その為、通称「虎の国」とも呼ばれている。
そして、それにちなんで通貨は虎である。



手に自分に似せて作られたパペットをはめた空汰によって次々と説明されていく、この世界のこと。
一気に話された為、頭がパンクしそうだ。



「はーい。質問いいですかー?」

「はい、ファイ君」

空汰のパペットがファイを指名する。


「ここはどこですかー?誰かの部屋ですかー?」

「ここはわいと嵐がやってる下宿屋の空き部屋や」

嵐を抱き寄せて話す姿は幸せそうである。

しかし、そんな様子に飽きて寝ている者が…。


「そこ、寝るなー!」

――パコン


勢いよく何かが黒鋼の頭に当たった。


「なにぃ!?何の気配もなかったぞ!」

黒鋼の隣にいたユナも驚き、辺りを見回すが何もない。


「な、何ですか…?」

「何って、くだん使たに決まってるやろ」

「「「「クダン?」」」」

「この世界のもんにはな、必ず巧断が憑くんや」

"巧断"
という字をキュキュッとホワイトボードに書く。


「あー、なるほど」

「あははははー。全然分からないー」

「モコナ読めるーー!」

「モコナは凄いのね」

近くにいたモコナの頭を撫でてやれば、えへへーと喜んでいた。


「ユナちゃんは読めるのー?」

「私は…分からないです」

自分の国では、このような字を見たことがなかった。


「小狼君は読めますか?」

「はい、なんとか」


これで黒鋼と小狼の世界は漢字圏であり、ユナとファイは違う言語であることが分かった。


「でも、言葉が通じるのは何ででしょうか?不思議ですね」

首を傾げる。
しかし、その謎は分からなかった。




「で、巧断ってのはどういう代物なんだ?」

「たとえ異世界の者だとしてもこの世界に来たのならば、必ず巧断は憑きます」

口数の少ない嵐が口を開いた。
手には空汰同様、自分に似たパペットを持っている。


「サクラさんの記憶のカケラが何処にあるのか分かりませんが、もし誰かの手に渡っているとしたら……争いになるかもしれません」


争いになる。
想定の範囲内であったが、やはり何かを手に入れるということは簡単ではないものだ。


「今、貴方たちは戦う力を失っていますね」

「どうしてそう思うんですか?」

初対面なはずなのに、そう断言した彼女に驚いた。


「うちの嵐は元巫女さんやからな。霊力っつうんが備わってる」

「実はーー次元の魔女さんに魔力の元を渡しちゃいましてー」

「俺の刀をあのアマーー」

「おれがあの人に渡したものは力じゃありません。魔力や武器は最初からおれにはないから」

嵐は次にユナを見るが、困ったように微笑んでいるだけだった。


「やっぱり貴方達は幸運なのかもしれませんね。もし、争いになっても巧断がその手立てになりますから」

「巧断って戦うためのものなんですか?」

「何に使うか、どう使うかはそいつ次第や。百聞は一見にしかず。自分の目で、身で確かめたらええ」

ここでだいたいの説明が終わった。



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