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02.



「そういえば、寝ながらでもその子のこと絶対に離さなかったんだよ。君ーー、えっと…」

「小狼です」

「こっちは名前長いんだー。ファイでいいよー。うーん、と…?」

「私はユナです」

こちらを見ている様子からして、ユナは自分のことだろうと判断した。


「で、そっちの黒いのはなんて呼ぼうかーー」

「黒いのじゃねぇ!黒鋼だっ!」

「くろがね、ねー。くろちゃんとかー?くろりんとかー?」

ファイは楽しそうにあだ名を考えている。

そんな二人のやり取りの傍ら、さくらの体を触っている小狼の顔に焦りが出る。

(体が…氷みたいだ…!)


「小狼君…?」

気になり、手を伸ばそうとする前にファイが動いた。
ごそごそ、さわさわと小狼の体を漁っている。


「なにしてんだ、てめぇ」

その様子を見て怪訝そうな顔をする。
はたから見たら、何とも言えない光景であるから。


すると、すっと取り出されたのは白い羽根。


「それ…、その子の記憶のカケラですか?」

ユナの瞳は羽根とファイの顔を不思議そうに行き来する。


「そうみたい。彼にひっかかってたんだよ。ひとつだけ」

「あの時飛び散った羽根だ。これがさくらの記憶のカケラ」

ファイから受け取った羽根を体に取り込むとサクラの体は温かくなった。


「今の羽根がなかったら、ちょっと危なかったねー」

「おれの服に偶然ひっかかったから…」

「この世に偶然なんてない」

静かな部屋に澄んだ声が響き、一斉にユナへと視線が集中する。
無意識に出てしまった言葉に思わずハッとする。
その時の顔は何だか辛く悲しそうだった。


「そうだねー。魔女さんも同じこと言ってたよね。だから、この羽根も君がきっと無意識に捕まえたんだよ。まあ、良く分からないんだけどねー」

ファイの発言により、一瞬重くなった雰囲気が元に戻る。


「けど、これからはどうやって羽根を探そうかねー」

もう小狼の服にはくっついていないようだ。


「モコナ、分かる!」

モコナ曰く、羽根に近づくと分かるそうだ。
魔力的なものが発せられているのだろうか。


「波動をキャッチしたら、こんな感じにめきょっ、てなる」

目を大きく開き、反応した時の姿を表す。


「きゃっ!」
「げっ!」

間近で見たユナはもちろんのこと、黒鋼も相当驚いたみたいだ。
胸に手を当て、跳ね上がった鼓動を落ち着かせている。


「だったらいけるかもしれないねー」

「あの羽根が近くにあった時、教えてもらえるかな」

「まかしとけ!」

丸い体ではどこを叩いているのかは分からないが、きっと胸を叩いているつもりなのだろう。
ドンと胸を張る。


「…ありがとう」

心強いモコナに小狼が嬉しそうに微笑んでいる。



「お前らが羽根を探そうが探すまいが勝手だが、俺にゃあ関係ねぇぞ」

ここで出てきたのは、今まで黙っていた黒鋼である。


「はい、これはおれの問題だから迷惑かけないように気をつけます」

「あははははー。真面目なんだねえ、小狼くんー」

思ってもみなかった返答であった為、黒鋼はばつが悪い。
小狼は笑われた意味がよく分かっていないようだ。


「そっちはどうなんだ?」

「んん?」

「そのガキ手伝ってやるってか?」

これから一緒に旅をして行くことになるのだ。
各々の意見を聞いて、ここではっきりさせておくべきであろう。


「オレは元いた世界に戻らないことが一番大事なことだからなぁ。ま、命に関わらない程度のことならやるよー」

「おい、女はどうなんだよ?」

今度はユナへと視線を送る。


「私も自分の願いに支障が出ない範囲なら、協力するつもりです」

笑ってはいるが、瞳には強い想いが感じられた。

大切な人を守りたい、そう思う彼の力に少しでもなりたいと思ったから。




「よう!目ぇ覚めたか!侑子さんとこから来たんやろ」

みんなで会話していると、部屋の扉が開けられる。
そこから突然現れた男は侑子を知っていた。


違う次元の人間なのに、知られているその名。
それほどまでに彼女は幅広い存在なのである。


隣にいた髪の長い女性は押し入れから布団を持ってきて、小狼に手渡す。
眠っているサクラを横にさせるために貸してくれたのだ。


「わいは有珠川空汰」

「嵐です」

ぺこっと軽く頭を下げる。

話によると嵐は空汰の奥さんだそうだ。


こちらの事情は既に黒鋼とファイから聞いていたらしく、理解していた。


「とりあえず、プチラッキーやったな」

「えーっと、どのへんがー?」

「一番最初の世界がココやなんて、幸せ以外の何もんでもないでー」

窓に手をかけ、ガラッと開く。

「ここは阪神共和国」


(――必然の羽根)



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あきゅろす。
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