01.必然の羽根
「ぷう、みたいな」
目を覚ませば、目の前には白い物体。
(これって、侑子さんが持っていた生き物。…確か、モコナだっけ?)
まだぼーっとする頭で上半身を起こし、必死に思い出す。
モコナはユナの反応がいまいちだった為、ユナの膝の上で落ち込んでいた。
最後に覚えているのは、モコナの口に吸い込まれ、次元を移動する空間を通ったということ。
「…と、いうことはここは別な世界」
「正解ーー」
独り言のつもりだったが、返事が返って来た。
横を向けば、金髪の男が微笑んでいる。
「呑み込み早いんだねー」
「…いえ」
「そんな警戒しなくても大丈夫だよー。あっ、あっちに立ってる黒いのも顔は怖いけど、心配しなくても平気みたいだよ」
最後の方の台詞は、ユナだけに聞こえるように話された。
話しながら、彼が指した方向を見れば、長身で目つきの悪い筋肉質な男がいる。
戸惑いながらも、ユナはファイに微笑み返した。
◇◇◇◇◇
「ぷう、みたいな」
一方こちらでは、先程ユナに良い反応をして貰えなかったことがよほど悔しかったのか、今度は小狼に顔を近づけているモコナ。
「さ…くら…」
「…ツっこんでくれない」
しかし、目覚めた小狼もそれどころではないようで反応が薄かった。
モコナはしくしくと落ち込んでいる。
「あー、目覚めたみたいだねえ」
小狼が目覚めたのに気がついたファイ。
「あっちに行こうかー」
今いた場所から、彼の方へと移動して行く。
ユナもそれに続き、彼らに近づいて行った。
「さくら!」
その先では、勢いよく起き上がり少女を探している少年。
見つけて安全を確認するとぎゅっと抱き締める。
彼にとって、彼女は大切な存在のようだ。
ふと、思い出す。
自分にとって大切だった者たち存在を。
今はもういないけれど、その気持ちは変わることはない。
だから、分かるんだ。
彼にとって彼女がどれだけ大切であるのかを。
彼女を見つめる瞳は、昔の自分のものとよく似ていたから。
「雨で濡れてたから一応、拭いたんだけどーー」
戸惑う小狼にファイが話しかける。
「モコナもふいたー!」
モコナは楽しそうにユナの元に駆け寄って来る。
どうやら、彼女のことはモコナが拭いてくれたらしい。
「ありがとう」
やって来たモコナを手の平に乗せ、感謝の言葉を述べる。
こうして見ると、愛嬌があり可愛いものだ。
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