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愛を捧げる(V/ユリデュ/文/微裏)





素朴な疑問だ、とばかりに告げられた言葉に動揺するなんて何年振りだろう、と艶やかな黒髪がさらりと肩から前に流れ落ちた。






愛を捧げる







普段研ぎ澄まされた鋭い眼差しは今は柔らかい黒水晶色。
それが映し入れるのは黙々と食を進める綺麗な銀色。柔らかく波打つような髪は輝きが零れるように揺れ、長い睫毛の下は血が通っている程の緋紅で色白な彼はまるで人形のようにも感じる。

勿論、一級品の。

対するように銀を見詰めながら脳内で悶々とした思考を広げているのは黒水晶の瞳と縁が紫陽花色に瞬く長く真っすぐした黒髪。
表と裏のような真反対の色合い。
時折黒髪、ユーリは白銀、デュークは何処から生まれたんだろうと真面目に考えたりもするぐらい正反対な互いが何故か共に暮らすようになったのは一年以上前の話だ。

その経緯も偶然、そして続いているのは奇跡に近いとユーリは感じていた。
ギルドの依頼で家を出る時は帰ってきてデュークが居るのかの自信はない、それでも明かりが灯っていて何度か安堵を逃がした事もあった。
そんな不安定な関係を何も知らない久々に集まった面々が口にした言葉。




ねぇ、結局青年はデュークとどうなってんのよ。
一緒に暮らしているって本当なのかい?
もしかして恋人同士です?
へぇ、意外。あんたが恋人もつなんてー。
ここっ、恋人…き、キスとかしてるの!?
あら、もっと発展してるんじゃないかしら。
むむ、それはうちも聞きたいぞ、ユーリ!



(むしろそれはオレが聞きたい)




ただ一緒にいて寝食共にしてほんの時々一緒に買物をしたりするぐらい、とユーリは考えながら食事終えた互いの皿を取り流しに持っていく。
矢次早に向けられた仲間達の疑問がユーリの意識を散漫にしていった。


「なあ」
「…?」


一緒に片付けを終えて手を拭くデュークは緩く背を曲げていて呼び掛ければ緋色は静かにユーリを見上げる。
流れる銀に惹かれたのは何時からか、余り喋らない彼の心情を僅かながら察せれるようになったのは何時からか。

こんなにも誰かが恋しいという感情を持ち始めたのは何時からか。

とくり、とユーリは胸が跳ね眉を寄せた。荒々しくも安らぐ気持ちは自分のみが持っているのではないか、と内心感じつつ笑顔を張り付けなんでもない風を装い軽い口調を紡ぐ。


「オレ達ってどんな関係なんだろうな」
「……」


細まる緋色にユーリは息を詰める。
数秒、数分と返事は返らず手を拭き終え背を戻したデュークは一つ息を逃がす。それが曖昧さに拍車をかけてユーリは頭を左右に揺らした。

悪い、とユーリが手をひらつかせて漸くデュークが口を開く。声量は何時も透き通るようにか細い。


「お前と床を共にした時に伝えた筈だが」
「……は?」
「覚えてないのか。いや、そうだろうな。酷く酒の匂いがきつかったのだから」
「え、っと…」
「先日酔って帰ってきたお前に好きだなんだと連呼された」


嘘だろ、そう内心考えながらユーリは口許に手を置き視線を斜め上に逸らす。淡々としたデュークの口振りから真実なのだと伝わり記憶を探る。
数日前に偶然会った騎士団時代の悪友と酒を飲み交わしついデュークの話をしてしまった、のをユーリは頭の端に浮かべ黒真珠が丸く見開く。

身を固めないのかというお節介に自分は美人と一緒にいるから彼女とかはいらない、と。
その勢いで帰宅したユーリは酒の力も借りて普段から閉ざしていた思いをそのまま口にしたのだ。

うっすら頭に思い出した記憶に目眩を感じ唸る黒に緋色はゆるりと細まる。
その瞳に呆れや嫌悪ではない微かに困ったような、慈愛の色がさしユーリは肩を跳ねて口から手を離し眼前の白い頬にひたりと掌を置き自らに向けた苦笑一つ頭を傾けた。


「忘れちまってるわ」
「そうか」
「だから、さ。もう一回聞いていいか」
「…構わない」


寄せた顔は避けられず呼吸が混ざり合う距離でデュークが笑うのが伝わりユーリはその唇をやんわりと自分のそれで閉じさせた。











一人用のベッドの狭さは常にあった、その上で座る銀の髪はシーツに流れ微かに窓から零れる月明かりで輝きが増している。
重ねた唇の熱さが未だ残るような感覚を飲み込み向かいに座ったユーリは白い肌に唇を弾ませる。額や瞼や頬に落ちるそれに微かに銀の長い睫毛が震えるのが解り口許が緩んだ。

赤茶の上着に手を伸ばせば緋色が細まり揺れる、そんな些細な羞恥心が含まれた仕草についユーリは衣服を緩める手を早めた。
元よりそれなりに開かれた首筋が普段より表になり透き通った首に指を添える。
ユーリも男性にしては白い肌をしていたが添えた先はユーリの指をくっきり浮かばせる程に白く微かに暖かい。体温は低い方なデュークの熱に黒髪を流してユーリは指を下げ鎖骨をなぞる。
ふ、と白い喉が跳ねるのが黒真珠に飛び込みユーリは視界をまあるく広げて頭を傾げた。


「もしかして緊張してます?」
「……煩い」


普段から小さい声が更にくぐもりユーリは喉を震わせもう一度唇を重ねて衣服を緩めていく。
うっすら開いていた緋色が堪え切れず閉じるのを見届け黒真珠も伏せられる。





服を脱がすまで急くように動いていた手は途端ぴたりと止まり唇を啄みながらユーリは自らの服を緩めたり白い肌に舌を這わせたりとゆるりとした愛撫を落とす。
時折、ほんの微かではあるがデュークが喉を震わせたりする姿に動きが鈍くなった。



可愛いんだよな、これが。



明らかな熱を出さずに、それでも細やかな反応が身体を伝わり届く。
堪えるような震えにユーリはどうやって崩そうか、と思考を巡らせながら胸の飾りを口に含む。歯を当てないように舌先で転がし舐めればデュークが喉をひくつかせた。

黒真珠のみを上へ上げれば顎を引き下げ眉を顰めて歯を食いしばるようなデュークの顔が映り瞬きを落とす。柔らかい睫毛に隠された緋色が見たくユーリは唇で硬さ帯びはじめた先端をやわやわと揉むように動かし、肩を跳ねさせたデュークの腰に片手を回し人差し指で背中下に彼の名を描く。

唇を震え立つ飾りに使っていては呼べもしない、とばかりに何度か名前を記していれば漸く気付いたデュークが銀をぱらぱら散らし呼び掛けに応えるよう瞼を押し開く。
小刻みに揺れる睫毛に開かれ現れた緋色が熱を孕ませているのをユーリは見届ける。まさか直ぐに視線が交わるとは思わなかったとばかりにデュークは悲鳴混じりに声を逃がす。


「っ、ゆ…」


ーり、とが名前を呼ぶより先に軽く先端に歯が立てられデュークは言葉を途切れさせた。歯がかちり、と鳴り顔を上げたユーリの黒く艶やかな瞳と緋色がぶつかる。
その黒水晶が優しく細められ背筋を這う感触が和らぎデュークが息を逃がして肩を竦めた。


「お前は…」
「?」
「何時でも優しくしてくれるのだな」
「そうかねぇ、忍耐強いだけじゃねぇか?本当はもう我慢できないし」
「しかしあの夜も優しかった」
「酔っ払いのオレか?」
「あぁ」


浅く頷く銀にユーリは眉を寄せた。正直な話し忘れた部分、初めてデュークと交わった時の記憶はどんなに頭を働かせても朧げでむしろ思い出せない位置にある。
微かにその時の自分に嫉妬すら感じユーリは普段は白い顔が恥じりを混ぜた色を浮かばせるデュークの唇に噛み付くようにキスを落とした。

急に降ってきた口付けに緋色は見開かれ呼吸ままならず唇を開けた瞬間を抜い舌を差し入れる。
荒い息遣いが互いから漏れ、ちゅくりと唾液を絡ませデュークの咥内を蹂躙していた舌が抜き離れた。その舌先から銀糸がふつりと切れ困惑と羞恥に彩られた銀が視線を左右に揺らすのがユーリの胸の高まりを増幅させる。


「デューク…」
「……なんだ」
「優しく出来なくてもいい?」
「…一々聞くな」


語尾を震わすデュークがユーリには愛らしく見え感謝に頬へ子供が戯れるようなキスを落とした。





ぎしり、と寝台が悲鳴を逃がす。長く使っていた事もあり大の大人二人の重みと振動に素直に音が響く。
閉じた窓から零れる月明かりは熱を篭らせ横になったデュークをまばゆく煌めかせる。眼下で眉を寄せ声を殺す煌めく銀が時折身を震わし跳ねるのを黒水晶は記憶に刻むように映す。

片手で支え上げる細い脚が小刻みに揺れ、内側に侵入したユーリの欲を強く締める内壁にユーリも眉を寄せて息を荒くはく。
汗が顎を伝いぽたりと陶器の胸元に落ちる、その一粒にも銀は喉を震わせ頭を左右に揺らす。


「はっ、ぁ…デュー…ク」


恋しくて恋しくて膨らんだ熱は中々止まずデュークの中を擦り挿し入れ律動を繰り返すユーリが片手を銀の真横に置き背を丸めて境目を深めながら名を呼べばデュークはびくり、と背を跳ね緋色を見開いた。

呼べど返事が無いのは声にし難いのかとユーリはシーツを撫でながら片手を下降させ頭を下げる。
はくはく、と口をうっすら開閉するデュークに納得が向かい黒髪を銀に混ぜて緋色の目尻に浮かんだ涙を舐めて下降させた手で互いの間に在るデュークの反り勃つそれをやんわりと握り上下に扱きながら深めた自分の熱の律動を再開させる。

急な刺激に小さな悲鳴が喉をひくつかせて零す銀にユーリは寄せた顔、互いの頬を擦り寄らせ口を開く。


「なぁ、オレ…あんたの声聴きたい…んっ、だけ…ど」
「ふっ、…む…」
「無理とか嫌とか言うなよ」
「――っ、は…」
「大丈夫、聴かせて…デューク」


ちゅ、と頬に唇を弾ませ汗ばみ限界を感じつつユーリは努めて冷静に、しかし熱を混ぜ紡ぎデュークの先端を緩く握り掌で擦り自らの欲は狭く脈動する銀の内側を撫でるように挿し入れるのを止めない。
その刺激に緋色は震えシーツに投げ出していた白い手がユーリの背中に回され強く抱きしめ応えるように内壁をひくつかせた。


「ユー、リ…んっ、う…あっ…」
「…は、っは…やべ、我慢出来ねぇわ…」


漸く上がる熱に浮かされた普段より幾らか高い声にユーリは頬を弛ませ抱きしめる手の温もりとぎゅうぎゅうに締め付ける内側に自らの欲をはきだした。











ぼんやりとする思考は激しい運動のせいだろう、とユーリはタオルを頭から被り息を逃がす。

いつの間にか窓向こうは白くなっていて朝が近いのだと感じれば少々自分の若さに苦笑すら浮かび同時に寝台で力尽きたとばかりに横たわる銀へ申し訳無さを感じ静かにベッド端に腰を掛けて柔らかい頭を撫でる。


「…聞きそびれちまったな」




起きたらまた尋ねてみようか。
オレの事好きか?と。

今更かもしれないけど、ちゃんとした言葉で聞きたいから。






(愚問だな)
(聞きたいんですけど)
(………好きでなければしない)
(率直な言葉でもう一回)
(…好き、だ)
(誰が?)
(……)

(オレはデュークが好きだぜ)

(…私も…


ユーリが好き…だ)


(もう一回していい?、…痛っ)
(調子にのるな)






―――
17171HITでリクエスト下さった方に捧げます+

甘裏でユリデュ、との事でしたが…
甘いでしょうか?
裏っぽいでしょうか?
しかし私の精一杯と
愛を込めまくってみましたvV

本当にリクエスト有難うございましたっ(礼)


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