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抱きしめて、留めて(ジェピ←サフィ)



目眩がする、と沸騰しかける頭を僅かに揺らす。そんな些細な抵抗には微動だにしない金は柔らかい香りを纏っていた。


「ピ…オニー…」


顔からずれる眼鏡が曇っている。歪む視界に声が掠れ雪のような銀が散り赤紫の瞳を持ち上げれば直ぐ近くに血色のいい顎先と上にある薄く開かれた唇。
太陽を吸い込んだような金がぱらぱら揺れてピオニーは唸りを逃がし抱き込み呼んだ彼、ディストを強く胸に引き寄せる。

反射的にディストの手が揺れる。普通よりは確実に大きく上質なソファだが大の大人二人が寝転ぶには狭いそこで暴れては落ちる可能性が高く曇りが増す眼鏡がかちゃん、と床に落ちた。
余りに強く抱きしめるからだ、とディストは息を飲み込む。

からかい混じりに部屋へ来ればピオニーの顔色が悪かった。
周囲が気付くように見せない姿勢は立派だがディストの腹を立たせるには簡単なその疲労を蓄えても笑う蒼に無理矢理ソファへ押し倒した。
普段ならば易々と逃げては追いかけっこか?等楽しそうに言う金は瞳を丸めるのみでやはり疲れているのだと銀を散らして怒鳴り、息を切らした瞬間空海色は緩やかに微笑んで言ったのだ。


じゃあ一緒にいてくれよ、サフィール


その言葉についつい頷いてしまえばこの有様。
まさか抱きしめられて一緒に横になるのだとは思っていなかったディストは熱くなる顔をふて腐れたようにその逞しくもやはり繊細な胸板に押し当てる。
とくりとくりとピオニーの鼓動が伝わり呼吸が詰まる。ディスト自身の心臓は煩く脳内に響き渡る。



あぁ、にくたらしい!
なんで私がいいなりになんか…



惚れた弱みという単語が頭に浮かび瞳を見開き所在無く垂らしていた両手をピオニーの背中に回して抱きしめる。
気の迷いだとばかりに強く強くその体と熱を交わせば薄く開かれた唇から言葉が落ちる。

途切れ途切れな言葉は寝言でしかなく、それでもディストの高鳴っていた高揚を静めるには充分な威力があった。

しかし回した手は解かずただその本音を言えない寂しがりやの皇帝が良い夢を見れるようにディストは滲む視界を伏せて息を殺す。






あの陰険眼鏡が恋しいならちゃんと本人に言いなさい!
起きたら言ってあげますよ、感謝ぐらい期待してもいいですよね。

ピオニー。





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