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この光があれば、きっと(ジェピ)



まばゆい陽射しは白には痛い。きらきらと反射する雪が視覚を刺激し紅い飴玉がふるりと揺れた。
分厚い雲に覆われてばかりの街に時に割って現れる太陽は刺激物のようだった。

きらり、きらり。

痛む飴玉を冷えた指先で摩り太陽が射している割りに冷たい空気を吸い込む。
痛みを緩和させ開いた視界にはやはり眩しい輝きがあった。

きらり、きらり。と。











はたりと瞳を開けば視界は薄暗い室内。無機質で無駄な装飾品や日用品を全く置かない部屋、否一角のみは本やらクッションやらが散乱していた。

椅子に座っていた部屋の主は深く息をはき銀縁のフレームに手を添え静かに外す。
痛む目頭を片手で押さえ視界に映る景色が全く霞まない、ただ縁取られていないだけの部屋に無意味に伸びた亜麻色をさらりと揺らした。



白昼夢、いや…うたた寝…か?



視線を下げれば途中まで出来上がっている書類。途切れた文章から斜め上に流し読み内容と続きの一文を瞬時にたたきだしジェイドは雪色の景色を垣間見た時間が僅かだったのだと飲み込んだ。


「……馬鹿馬鹿しい…」


ぽつりと呟き万年筆へ手を伸ばす。
過去の夢を見た事実に吐き気すら覚え眉を寄せる。ちりっ、と瞳が痛み硬質な万年筆の背を指が跳ねる。左手に握る眼鏡の存在を思い出し息を飲む。
瞳の痛みが脳に響き渡る前に些か急ぎつつ眼鏡をかける。じんわりと収まる刺激に自分の余裕の無さを感じ皺を深めた瞬間縁取られた世界にひょい、と金が割り入って来て肌濃い人差し指がジェイドの眉間を押した。
ぐいぐい、と押され呆気に取られたジェイドは直ぐに反応出来ず眉が緩む。それに合わせ離れる指先に漸く紅玉が瞬いた。


「なに、を…」
「酷ぇ顔、してたから」


大丈夫か?と空海色の硝子玉が問う。
眩しさにジェイドが視界を狭めたのを金は心配気に覗き込む。

くしゃり、と書類がよれる音。
近い金が覗き込むその中傾けた彼がジェイドの唇をやんわりと啄んだ。
その温もりに亜麻色が震える、視界一杯の太陽は弾む音を付けて離れ気恥ずかしそうにそれでも幸せそうに笑った。


「根詰めるなよ、ジェイド」


幾度目かの呆けた思考の合間にジェイドの頭を彼が撫で机から離れた。
揺れる金の糸がやはり眩しくジェイドは息を飲み込む。


「…ピオニー」
「なんだいきなり」
「……有難う」


その言葉に驚愕表わにピオニーが慌てふためき先まで我慢していたのか一気に頬まで染め上げて一目散に部屋から去りジェイドはくつりと喉を鳴らした。

揺れる金の稲穂がやはり眩しく紅は細められる。






きらり、きらり。と。
眩しい太陽、光を私は手に入れた。

酷く痛く、逸らしたいぐらいに苦しい。

だけど何よりも
愛しい私の貴方。







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