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変わらない、この気持ち(ピオ←ネフ/幼少)



私の中の王子様はたった一人です。



寒い雪が街を包む中白い息を沢山零し舞わせながら駆け足で足跡を作る少女は静寂で聴覚さえ凍らせる中に居る太陽のような少年を見付け歩を速めた。

少女にとって少年はこの小さな街で一番暖かく誇らしくさえある、そんな存在だった。

もしも神様がいるならば彼は神様に愛された王子様なんだろう、と幼くまだまだ小さな夢物語が好きな少女は思う。
きん、と冷えた顔は赤く染まり寒いか?と少年は駆け寄ってきた少女に問い指先を朱くした手を差し出してくる。少女は母親に言われた手袋をしていて、素手の少年よりずっと手は温かかったが繋いだ褐色の掌は不思議とあたたかかった。



うぅん、違う。
私があたたかくなったの、だって顔がすごくすごく熱い。



無意識に俯く少女に少年は首を傾げた。
さらさらの金の髪や普段のこの街では見えない綺麗な空色の瞳。容姿端麗にも関わらず無鉄砲ではあったがその気さくな仕草に少女は笑いを何時も零していた。

なんでもないの、と心配そうに見詰める青から少女は頭を振り繋いだ手をきゅっと強めた。
少女の鼓動は強く弾み少年にこの高揚が届いて欲しいような気付かないで欲しいような、そんな気持ちが浮かんだ。






そう、私の中の王子様はたった一人。


年月を重ね少女は夫をもち、少年は王子様より遥か高見に存在するようになった。
少女だった彼女の隣には少年ではない男性が居て、彼女はそれを不幸だとは思わなかった。焦がれた感情ではない出会いだったが男性は彼女を優しく包んでくれている。
少年だった彼の隣には少女の兄が居る。成長する前には自分がいたその場所はいつの間にか兄にとられてしまったが彼女はそれを悪くはないと思っていた。


「ねぇ、今日は貴方の大好きな花が咲いたわ」


雪が降る国で少ない花、少年が愛した花は少女が今も慈しみ眺めている。





貴方はこの国の光だった、私が一人占めなんて出来ない命。

だけど私にとって貴方は最初で最後のたった一人の王子様なんです、ピオニー様。





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あきゅろす。
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