朝、寝顔、観察中(ED後、フレ→→→←ユリデュ←レイ)
木漏れ日が室内の明るく朗らかに照らす。
カーテン等無い部屋の難点は直射日光ではあるが城下街の下にあるおかげか他の建造物で波打つ光は柔らかい。
とはいえ朝日となればまた話は別で窓下に寝台を置かない理由はまさにそれである。
ベッドを軋ませ背を伸ばす彼は漆黒の髪を散らし横に寝ていた体を仰向けに変える。窓側の方に流れた髪が日差しできらきら瞬き薄い紫に照らされうっすら開いた瞳はぼんやりと天井を見上げた。
「……ん…」
零れる声は黒髪の彼の隣からでようやくと紫黒の瞳を覚醒させた彼、ユーリは外側の手を天井に向け伸ばす。ぐー、ぱーと開閉を繰り返して隣へ意識を向ければ自分と真反対な色合いの男が背を曲げて寝ている。
長いふわふわの睫毛は髪と同じ白銀でユーリは息を殺して身を横寝に戻し向かい合いじぃ、と見詰める。
瞬間視線に気付いたのか一度眉に皴を作ってから閉じられた瞼が開かれ紅い瞳がユーリを見返した。
「………なんだ…」
「寝顔堪能ちゅ…う!」
語尾が荒れたのは顔面に突き出された拳を受け止めた弾み、がっしりとユーリは拳を包んで悪戯に満ちた笑顔を返す。
至近距離の攻防で目が覚めたユーリと寝起きからか髪のうねりが増した白銀、デュークはどちらともなく手を離し起き上がる。
寝台の後方でくぁあ、と欠伸を逃がすラピードの声にユーリが素足で降りデュークは丁寧にシーツを延ばした。
「なに食べたい?」
「…なんでも構わない」
「あんたそれ毎日言ってる。んで毎日それが一番困るって言ってんですけどー?」
「……オムレツ」
「ほい、決定。ふわふわ甘々な」
味付けはユーリの好み。
腕を捲り髪を束ねてデュークがラピードのブラッシングを勤しみだすのを黒真珠が捉えて手を洗い卵に手を伸ばす。
朗らかな朝。
ぐわし、と手にした望遠鏡を握りしめる金はわなわな震えている。余りに強く握るものだから望遠鏡も悲鳴を出すようにミシミシと鳴っている。
ユーリの窓が見える位置の部屋の中はカーテンで締め切られ薄暗い。正面の家で見張り宜しく凝視しているのはフレンだった。彼が怒りについに望遠鏡を一つ駄目にしてはぽいっと放り投げ新しい望遠鏡でカーテンの隙間から黒髪と白銀の様子を窺う、背中を半目で見るのは角に座るレイヴンだ。
「フレンちゃーん」
「あぁあっ!あんなに密着して…逃げて、ユーリっ」
「あのさー」
「くっ、僕が今すぐ連れ出せれたら…!」
「これ、監視ってやつよね?しかも家宅不法侵入、俺様家人に通報されてきたんだけど」
一階の隅で青ざめた老夫婦を思い出しレイヴンは肩を竦める。
ユーリの住まう部屋が見れる位置に建ってしまった家に住んでいるという運が悪さで被害を受けた彼等に同情も出来る。勿論こんな事になる等この世の誰も予測不可能ではあるが。
しかし捕まえるには騎士団長の背中はまばゆい。レイヴンはなんとかフレンの奇行…―フレンいわくユーリを守っている、らしいが―…を宥めて帰りたい、とレイヴンが必死に声をかければ爽やかな笑顔で金髪の王子様が振り返った。
「大丈夫、下町の皆はわかってくれます。僕、下町のアイドルですから!」
うわぁっ、真顔で言っちゃってるよっ!
ごくり、と息を飲みレイヴンが額を壁にあてれば問題無しとフレンはまた覗きに徹するのだった。
下町のアイドルが自称でないのが彼の質の悪さである。
(隊長はよく放任できますね)
(それが愛ってもんよ、若人!)
(あ、デュークの頬の卵ユーリがとって食べ…)
(許容範囲ってもんはあります、青年ーっ!ストップストップ!)
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