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甘い(フレユリ←←レイ)



ふんわり柔らかい生地に甘いクリーム、甘いだけでない果実のみずみずしさ。
口内のその味に絶賛したのは結構前。ユーリは瞬きを落とす事無く薄く狭めた瞳で俯き気味に黙々とクレープを食していた。

鼻を通る甘さすら愛しく感じ言葉少ない姿を見守るのは旅の仲間達。
椅子の変わりにした岩の横にはあふ、と欠伸を逃がすラピードがユーリの近くに体を休めている。まるでナイトのように付き添うせいでデザートに嬉々を浮かべる何時もより柔らかい表情を浮かべる紫陽花色には誰も近づけなかった。

最後の一口を頬張り指についたクリームを長い睫毛で瞳を隠し舐め上げれば子供には刺激が強かったのかカロルが顔を赤くして食器を洗いに逃げる。
その小さな背中を面白そうにジュディスが見守って笑えばぱちりと黒真珠が開かれくるりと周囲へ視線を流す。
目的の人物の丸い背中が木に額を寄らせてしゃがんでいるのを見付け右手を持ち上げた。


「おい、おっさん。なに黄昏れてんだよ」


いやあれは興奮しているの間違いだから、とカロルがいればつっこみが入ったかもしれない。
それも面白い雰囲気には首をつっこまず放置し面白さが増すのを望むジュディスと我関せずのリタや気付いていないエステルでは誰もユーリを止めたりしなかった。

声を掛けられ渋々と…―むしろ高揚を押さえ込みつつ―…レイヴンが振り返る。
かちあった瞳が輝きや潤いを含む綺麗な黒で思わず鼻先を片手で覆い立ち上がりユーリの方へ歩み努めて明るく言葉を延ばした。


「なーにー?」
「おかわり」
「……え?」
「だから、おかわり」


ん、と皿を持ち上げ座るユーリは瞳を持ち上げる。普段はレイヴンより高い彼のねだるような俗に言う上目使いは闇星が煌めくように輝きぐらりと垂れた瞳が見開き皿を受け取りつつ白い腕を掴もうとした瞬間跳ね起きるようにレイヴンの足にラピードが頭突きをかましごろりと転がる。

なにやってんだよ、と無情の言葉が地面と仲良しになっているレイヴンに降り懸かり腿を摩りながらのそりと体を起こしラピードへ睨みを向ける。
火花が見えそうな二人にも気にせずユーリが皿をレイヴンの鼻先に差し出す。


「レイヴンのクレープ、美味いぜ」
「オッケー!青年っ、俺様に任せておきなさーいvV」


ガウガウ唸るラピードに追い立てられつつ鼻歌混じりにレイヴンが調理に向かえばジュディスは妖艶な笑みを広げた。


「ふふ、扱い方を心得てるわねぇ」


名前と笑顔のコンボは甘い物嫌いも動かせるものである。





(あいつもこれぐらいできりゃあいいのにな)
(くしっ……ユーリが噂してる?)









―――
ありがちネタ







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