せめて触れないで(フレユリ) きらきら輝く太陽は正直下町では無駄に映えた。 それこそ大人から子供まで綺麗な金に憧れる女子は多く、それでもその金は何故かオレの手を取って離さなかったんだ。 ユーリ、久しぶりだね。今暇かい?だったら付き合ってくれないかな、街で新しく出来た喫茶店凄く美味しいらしいよ。 ひょこりと顔を出したフレンは早口でまくし立て部屋の中で剣を磨いていたユーリを圧倒させる。 お前が暇なのかよ、てか何しに来た、いや聞けよ、つうかそういうのは女に言って、おい離せ ユーリが放つ言葉全てにフレンの透明な声が重なり疑問も抗議も届かない。結果無理矢理腕を引かれ部屋を出る、かしゃりと剣が床に落ちる音がした。 ベッド後ろで丸くなっているラピードが耳を微かに揺らしたがうっすら開いた瞳に主人二人をいれては我関せず、前足の間に顎を落とす。 助けは入らずユーリは眉を寄せる。前に映る金の髪の親友は久方振りに騎士団の衣服ではなかった。黒を纏うユーリとは違い白の柔らかい生地が金に混ざり目に痛む。 階段を降りる辺りで掴まれていた手を勢いつけて離せば先に進んでいたフレンが驚き振り返る。 段差のせいで普段は目線が同じな二人に差が生まれていた。空色の瞳を上げユーリを見詰めるフレンには光が当たり縁が紫陽花色を放つ黒髪を散らすユーリが息をはく姿が映る。 その小さな動作に空色は瞬きを落とした。 「ユーリ、迷惑だった?」 「迷惑ってか急過ぎ。ちょっとはオレの話聞けよな」 「ごめん。でも時間が惜しくて」 「………わかった、わかったからせめて手を引くのは勘弁な」 掴まれていた方の手をひらつかせ注意を促せばフレンは花が咲いたように笑う。その笑顔はまるで王子様のようだ、と誰かが評したのをユーリは思い出し肩を竦める。 あぁ、なんで。 なんでお前はオレに構うんだよ。 フレンの言葉通り確かに新しい喫茶店の味はよかった。 パフェを口に運ぶユーリを幸せそうに空色が見詰めていればユーリは気持ちよくはなかったが。 「ねぇ、ユーリ。騎士団に戻らない?」 「嫌だってんだろ」 (目標その2は失敗だな) (うっさい、最初からそれが目的だっただろ) [次へ] [戻る] |