僕らのディスタンス(政小)
ああこの想いが心臓を切り裂く刃になってしまえばいいのに。

愛してしまった理由はもう思い出せない。近すぎたのだ、きっと。そもそも自分の持つ感情の大半は、あの男が与え教え示したものなのだ。その相手に感情が集中してしまうのは、やはり仕方がない話だと思う。


「笛が、聞きてぇ」

「今、ですか?」

「ああ」


そう乞えば酒を注ぐ手をとめ、懐からひとつの笛を取り出す。黒く愛想のない古びた笛だ。自分が幼い頃から、いや、もしかしたら彼が幼い頃からずっと存在しているであろう笛。


「ご所望の曲は?」

「何でもいい。好きに吹け」


簡潔に告げて、隻眼を閉じ聞く体勢に入る。そうすれば直ぐに耳に、凛と澄んだ音が響く。
小十郎の音は、小十郎自身によく似ていると思う。凛と清しく、時折ひどくまるくやわらかく。触れれば切れそうな程の冴えと、ゆるく染み渡る甘さが耳から脳へと伝わってくる。


「………」


あいしている。そう、素直に言えたらどれだけ幸せだろうか。ただそれを告げてしまうには、自分はこいつに執着しすぎたし、こいつは真面目すぎた。
想いが通じてしまえば、小十郎を喪ったら自分は壊れるだろう。想いを知ってしまえば、小十郎は日常を繰り返せないだろう。近すぎたのだ、単に。愛で終わる位置を過ぎてしまった。


「なぁ、小十郎…」


笛の音が夜空を飾る。


「月を手にするには、どうすりゃいいんだろうな」


指先をかすめるばかりの音色と月光が、なんだかひどく憎かった。
あの月にはあと3センチほど届かない




2000リク、政小シリアスです。い、如何ですか秋羽様…
政小というか政→→←小くらいですみません(汗)何故かW片思いフラグがたってしまいました…orz いやむしろ小十郎がほとんど空気ですみません…!!
返品苦情いつでも受け付けます!
秋羽様、リクありがとうございました

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あきゅろす。
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