それは例えばよくある話(輝vs政→小)

「父上のバカ!こじゅうろーはオレのもんだ!」

「駄目だよ、梵。景綱は私のものだからね」

俺はそもそも物じゃありません。と、心の中で突っ込みながら、小十郎は現状を観察してみた。まず正座した膝には輝宗の頭が乗っており、右腕には梵天丸がしがみついている。正直、身動きできなくてツラいのだが、輝宗はともかく梵天丸が拗ねそうで言うに言えない。
どうしたものかとため息をひとつ吐いて、小十郎はこうなったいきさつを思い出す。
まず執務から逃げたか何かしでかした輝宗が逃げ込んできて、それから手習いを終えた梵天丸が小十郎を探しにきたのだ。そこまではいい。良くある事だ。問題は、輝宗が小十郎の膝枕でくつろいでいたことにあるらしい。何せ部屋に入ってくるなり右腕にしがみついて、冒頭の台詞を喚くくらいだ。しかも輝宗をそれを面白がるから、また質が悪い。

「こじゅろ、こじゅろ!こじゅろは、オレのものだよな?」

「景綱は私のものだよねえ?」

一人は無邪気に、一人は楽しげに。どうにも答えづらい質問に、小十郎は困ったように眉尻を下げる。

「いえ、あの、」

「ああ、ほら。梵が我が儘を言うから景綱が困ってしまったろう」
「オレのせいじゃねえっ!父上が悪いんだっ」

とうっ!と、不満顔の梵天丸が輝宗の腹にダイブするが、その程度で堪える輝宗ではない。むしろダイブしてきた梵天丸を捕まえ、盛大にくすぐり始めた。

「ふふふ、悪い子にはお仕置きが必要だね」

「ぎゃーっ!?たすけろ、こじゅーろー!!」

「…何やってるんですか、お二人とも」

目の前で繰り広げられる実にレベルの低い戦いに、思わずため息。ほほえましいと言えばほほえましいのだが、自分の膝の上で行われては流石に邪魔だ。

「父上のせいで、こじゅろに怒られたっ」

「おや、まだ言うのかな?さすが私の息子、頑固だね」

「ぎゃーっ!」

「輝宗様っ!」

再び暴れ出す前に何とか声をかけてとめると、なぜか梵天丸にじとりと睨まれた。

「だいたいこじゅーろーが悪いんだ」

「は?あの、梵天丸様?小十郎が何かしましたでしょうか」

「私の事は構ってくれないのかな?景綱」

「え?え?て、輝宗様?」

にこにこと笑う輝宗と、可愛らしく睨みつけてくる梵天丸。片方に構えば片方に絡まれ、もう片方に構っても同じことが起こる。立派な泥沼式停滞トライアングルの完成だ。
「こじゅろはオレと父上どっちが好きなんだっ!?」

「それは私も気になるねえ。どっちなんだい、景綱?」

小十郎は固まった。どちらを立てても角がたつ。どうすればいいかと必死に頭を巡らせるが、何も思いつかない。ダラダラと背中に汗が伝う。初陣の時でさえ、ここまで緊張はしなかった筈だ。

「ど、どちらも好き…では、いけませんか?」

「ダメだ!」

「駄目だよ」

退路封鎖。何とも厄介な状況に追い込まれてしまった。どちらを選ぶべきか…梵天丸を選べば、輝宗が拗ねる。大人げなくいじける。かといって輝宗を選べば、梵天丸が暴れ出す。そして最後に拗ねる。厄介だ、本当に厄介だ。
輝宗を探しに来た綱元のおかげで小十郎がこの小さな窮地から救われるまで後半刻。




888リク「輝宗と梵天丸で小十郎の取り合い(ギャグ)」です!気持ち日記の脱出可能〜と繋がってますごめんなさい(汗)
…ギャグ?と、とりあえず取り合いはさせましたっ!(汗)どっちが好きなの?は取り合いの王道台詞だと緋遊さんは信じてやみません(爆)
返品苦情いつでも受け付けます!リクありがとうございました

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あきゅろす。
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