愛しのSweet Sweet(政小)
「政宗様、またですか」
台所にたちこめる甘い香り。あまりに濃厚なその香りは、甘いものが苦手な人なら嗅いだだけで胸焼けを起こしかねない。
「Oh…sorry、小十郎。作り出したら止まらなくなっちまってな」
言いながらも、次々と作られていく大量の菓子。ありがちな団子や饅頭から、西洋菓子まで無駄にバリエーションに富んでいる。
「お疲れなら、素直に休んでくださいと何度も…」
「I see、I see。でも仕方ねえだろ?これやるとスッキリすんだよ」
まったく反省する様子のない政宗に、思わず小十郎の口から深いため息がもれる。
政宗は仕事などで酷く疲れると、何故かよくこうして菓子作りに没頭する。もともと料理が趣味で台所にはよく立つ政宗だが、この時はいつもと少し違う。普段の政宗は、凝った品や好きな品を2つ3つ作るだけなのだが、この時だけは誰が消費するのだと疑問に思うほどの菓子を一気に作り出すのだ。
「ですが、」
「ほら、新作の焼き菓子だ」
小言を続けようとして開いた小十郎の口へ、焼き菓子をひとつ放り込む。瞬間、泣く子も黙る強面がへにゃりととろけた。あまり表立って言うことはないが、実は小十郎はかなりの甘党だったりする。そしてこの菓子の山の大半を消費するのも小十郎だったりする。
「美味いか?」
「……大変美味にございました。しかし政宗さ、」
「そうか、そいつは良かった。まだまだ有るから、どんどん食ってくれ」
機嫌良さげな政宗に、これは何を言っても無駄だと判断した小十郎は大人しく菓子を消費し始めた。
だが小十郎は知らない。政宗が菓子を作るのは、単にストレス解消のためだけではない事を。理由の半分は、菓子を食べる時の小十郎の甘い笑顔が見たいからだという事を。
こうして人払いのせいで女中達さえも居ない空間には、しばらく菓子を作る甘ったるい香りと菓子を食べる音だけが響くことになったのだった。
了
砂糖は貴重じゃないのかという疑問には、魔法の呪文「BASARAだから」を唱えましょう(爆)
甘党な小十郎に萌。菓子作りの上手い政宗に萌。珍しくらぶい。
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