重なり合った闇色の(政小)
言い訳ばかり繰り返しても、目の前の緋色は薄れない。時とともに緩く錆びついていく色彩が、腹立たしいほどに視界を抉る。
ぎらりと閃いた輝きも、もうぬらぬらと鈍く濡れた光を弾くだけで美しさなんて欠片もなくなっていた。

「もう宜しいので?」

冷静に響く声すら、何処かぬるい狂気を孕んで染みる。視線で振り向けば、赤錆びた空間に不似合いなほど涼やかな立ち姿。凛と伸びた背筋、纏わりつく汚れをはらうためだけの動作すらきりりと清しい。

「ああ、雑魚の相手はもう飽きた」

言いながらも、六爪は下ろされることなく視線の底にちりりと燻ぶる火花も消えていない。ただ熱病のような狂気だけがひそりと眠りにつこうとしていた。

「そうですか…」

答えながら、辺りを見渡せば残るのは確かに小物ばかり。これでは腕慣らしどころか、退屈しのぎにもなりはしないだろう。
ふ、と。小十郎の冬の朝のように張りつめた気配に、黄昏色の闇が滲む。

「ならば、これより先はこの小十郎にお任せ願えましょうか」

「Ah…?そうだな、いいぜ。好きに吼えろ………」

じわりじわりと滲み染まり始める狂気に、くつりと喉を震わせながら許可を出す。
この誰よりも禁欲的で凛と澄んだ男が、こうして静かな狂気に沈む瞬間は堪らなくそそる。
こうして二人竜となりえたのは、他の誰にも代わりができない訳はこの共有された狂いにある。密やかな病のように侵されて、ずるずると闇の淵に呑みこまれる。
誰にも理解されない、誰とも重ならない、冷たく凍てついた熱病。

「いいぜ、もっと強烈に染めてやれよ。折角のpartyだ、派手にいけ」

「承知…」

鮮やかに空気を切り裂いた刃と、肌を染める赤い雨と、脳髄まで満たした狂気が正常な異常。
きゅうと吊りあがったのは、一体誰の唇だったのだろう






戦バカな2人を書いてみた

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!