Spring・dreamer(輝小)
春眠暁を覚えず…とはよく言ったもので、春は何故か眠くなる。どうしようもなく眠くなる。それは夜、しっかり寝ていようといまいと同じことで、とにかく眠くなるのだ。
そして、珍しいことに小十郎も春の睡魔に負け、机に伏してうたた寝をしていた。


「景綱ー、…おや?」


輝宗が部屋を覗けば、やわらかい日差しの中で眠る小十郎の姿。こうして眠っていると、まだ幼さの残る顔立ちのせいかその様はどことなく微笑ましい。


「ふむ…これはよいものを見たねえ」


こっそりと足音を忍ばせて、近づいても小十郎は目覚めない。ふと、こうして寝顔を見るのは初めてだということに輝宗は気付いた。


「かーげーつーなー?」


呼びかけても、返事はない。
寝顔は見たいが、小十郎で遊べないのはつまらない。さてどうしたものかと考えこんだ輝宗の視界の端に、春のかけら。


「…………」


多分、というか絶対に起きた小十郎には、怒られる。だが…


「…まぁ、春だからね。仕方ないということにしてもらおうかな」


機嫌よく笑い、一度部屋を後にした。


○○○


「ん……?はな?」


小さな違和感に、小十郎は目を覚ました。


「おや?おはよう、景綱」

「え?あ…はい、おはようございます輝宗さま………ててて輝宗様!?」


起きるなり、目の前にあった主君の姿に思わずかすかな眠気も吹き飛んだ。慌てて、姿勢を正せば背骨がバキボキと実に不快な音をたてる。


「ふふふ、可愛い寝顔だったよ」

「ななな何を仰ってるんですか!?」


ぎゃあと顔を赤くして輝宗から逃げるように、身を引けば不意にぽとりと黄色いものが落ちてきた。


「え…?これは、蒲公英?」

「ああ、春めかしくて良いだろう?」

「はあ…」


曖昧に言葉を返すが、何故上から蒲公英が落ちてくるのかわからない。試しに天井を見上げても、もちろん蒲公英なんて生えていない。これは一体?と、小十郎が眉間にシワを寄せると、輝宗がくすくす笑いながら鏡を差し出した。


「…あの、輝宗さま」

「可愛いと思わないかい?」

「いえ、その…これは一体?」

「うん?ああ、景綱は男の子だから知らないのかな?花冠というそうだよ、私も昔お義さんに教わってねえ」


にこにこと小十郎の手にあった一輪の蒲公英を受け取り、それを器用に指先で回しながら、輝宗は説明した。その間も小十郎の視線は、鏡に映った自分の頭に乗っかっているそれはそれは可愛らしい花冠に釘付けである。


「人が寝てる間に、何をなさってるんですか!?」

「可愛かったからねえ…仕方ないよ」

「可愛くないです!そもそも俺は元服も済ませた一人前の男です!可愛いなんて言われても嬉しくありませんっ」

「ははは、景綱は本当に可愛いねえ」

「〜っ!輝宗様!!」


春色に染まった頬で怒る小十郎と、春めいた思考回路で笑う輝宗。
こうして奥州の春は、のどかに過ぎていくみたいです。







星羅様に触発されて再び捏造輝宗さま参上!輝宗さま×若こじゅ…ぶっちゃけ蒲公英を頭に飾られる小十郎と花冠編んじゃう輝宗さまが書きたかっただけです(爆)あと自分で一人前の男とか言っちゃう青い小十郎が書きたかったんです←帰れ
妄想大爆発ですみません!春だから…という事で流してやってくださいorz

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