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三橋は、一瞬ピクリと肩を震わせたが、逃げようとはしなかった。
変だな。
と思った。
三橋の投球に異変を感じるとき、そういうときは三橋本人もそれを自覚している場合がほとんどだった。
だから、大抵は逃げるんだ、俺がこう詰め寄ると。
「な、何…って、なに、が?」
本当に何のことだかわからない、というように三橋は首をかしげる。
「何がって……お前、一体俺が何球受けてきたと思ってんの。」
明らかに今日の投球は、いつものお前のと違うぞ。
いや、タマ自体に変化はねぇんだ。一見変わりはねぇ。
ただ。
いつもなら、一球一球受けるたびに感じるお前の何かが。
今日は無い。
「う…おれは、いつもと同じ、だよ?」
「うそだ」
「なっ、んで?うう嘘、なんかじゃな…」
「うそつけ!!」
頑なに認めようとしない三橋に、俺はついに怒鳴り声を上げてしまった。
周りにいる奴らが不安そうに俺たちを見ているのがわかる。
しかしそんなの気にしてる場合じゃない。
「三橋。なに隠してんだ。…まさかお前、体どっかおかしいの?」
「………う」
もう一つおかしいことがある。
こいつ、さっきから全然目を合わせねぇ。
平気なふりして、全然いつもの三橋じゃねぇ。
俺はますます疑惑を募らせる。
「黙ってて誤魔化せると思うなよ。俺にはわかるんだからな。」
「うあ……」
俺が詰め寄れば詰め寄るほど、三橋の異変が見て取れる。
「大体、お前今日は最初っからおかしーんだよ。昼休みもこっちの教室に来ねえし。……まさかおま、昨日体冷やしたせいで」
「わ、かんない…」
「あぁ?何だよ。アイスを食うなって言おうとしてんじゃねぇぞ、俺はただ今日のお前の異変が体の調子のせいじゃないかって聞こうとおも」
「ああああべくんには、わかんない よ!!」
「!!」
今度は三橋が、怒鳴り声を上げた。
しーん。
と、俺が怒鳴ったときよりも更にグラウンドが静まりかえる。
そりゃそーだ。
滅多に聞けない三橋の怒鳴り声が聞こえたんだ。
そりゃみんなビックリするよな。
だけど自信がある。
ここにいる誰よりも、そう誰よりも。
俺が一番、ビビってる。
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