G




きりーっつ。
気をつけーっ。
れーーー!
ガタガタガタガタッ。
みんな、気をつけも礼もせずにバラバラに教室を離れていく。

さて。
グラ整グラ整っと。
花井は監督に呼ばれたみたいだから、俺は一人で練習場へと向かう。(水谷は置いていく。)

…と、少し気になったので、途中で九組の教室を覗いてみた。
でもそこには楽しそうにホウキを振り回す田島の姿しか見えなくて、俺はちょっとガッカリする。

……ガッカリ?
ガッカリてなんだ俺。
何に凹んでんだ俺は。

…まーいいや。


グラウンドに行けばあいつはいる。
聞きたいことは、そんとき聞けばいいさ。







と、思ったら。


「……オイ栄口。三橋は?」


ここでもあいつの姿が見えねぇ。


「え?あれ、そういえばどこ行ったんだろ。さっきまでいたのになぁ。」

ここに来るときも一緒だったんだけどなぁ、と栄口は付け加えた。

チッ。
なんだか心配を通り越して腹が立ってきた。
なんなんだ今日のあいつは。
俺を意識して避けてるとしか思えない。
今まで、話しかける俺にビビることはあっても、話しかける以前に顔を合わせないようにするなんてことは無かったのに。

それとも今日は、そういう運命の日なのか?





「はーーーいみんな!グラウンド整備はもう終わりっ!ちょっと集合してーっ!」

モモカンの声で、野球部の全員が同じ場所に集まる。
モモカンを囲んで綺麗に輪に並ぶ俺たち、その中に。
俺の隣の隣の隣の、そのまたとなり。


…いた。

俺はそのとき初めて、今日初めて三橋の姿を見る。

なんだ。ふつーにいるじゃん。


大きめの、ギョロッとした目を下に向けて、口を逆への字に曲げ、薄茶のくせっ毛を無理矢理帽子の中に突っ込んでいる。
いつもと変わらない三橋の姿。
嫌な予感は気のせいだ、きっと。








「6球!」



バシン。
使い慣れたキャッチャーミットは、聞き慣れた音を立てて、三橋の球を受け止める。


受け慣れたはずの三橋の球。
そう、初めてあいつにあった日から何度も何度も、何万球も受けているはずの球。

だからわかる。




「あのさ。」


7球目が、俺のミットにキッチリと受け止められた直後。


「…今度は何?」

俺は立ち上がって三橋の元へ歩み寄る。




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