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「おお、俺は……」

ダラダラダラ。漫画ならそういう効果音が入っているに違いない。
実際に汗は流れてないけれどそんな感じがした。

三橋のヤツ。
解答に困るようなことを聞かれるといつもこうなる。
でもそれは答えがわからないからではないのであり。
答えがわかっていても、どう答えたら良いのか、そもそも答えて良いものか、と悩んでいるからなのだ。

うん。俺、なかなかコイツのことわかってる。
最初のころは、三橋の一挙一動、その理由を理解するのにいちいち時間かかってたけど、今はだいぶ。
俺だって進歩したと思う。

早く言え、と三橋を睨む。
と、三橋はビクリと肩を震わせて、ダラダラダラの効果音が、ダーーーッと激しい滝の音に変わった。

おもしれーやつ。
そう思えるように、最近はなってきた。
昔は、イライラして仕方なかったけど。


「う おれが、阿部くんに心配かけるよーなこと……してる、から、イケナイんだ よ…」

ほんとうに、ボロ雑巾から水滴をしぼり出すように、三橋は答えた。

あれ。あれ?
……うん。うん。まぁ、そーだよな。

その答えは確かに、俺の予想範囲内だったけど。
なんだか、俺が求めていた答えとは根っこの何かが違う気がした。
のは、何でだ?



キーンコーンカーンコーン。

各自、教室に戻りなさい。
そう予鈴が俺たちに告げる。


泉が、田島が、栄口が……三橋が、教室から去っていく。


あれ、なんだったんだろう。
どこか煮えきらない気持ちが俺の中にある。

ひとり、取り残されたような気分になった。






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