A
「別に。フツーじゃん」
俺はいちキャッチャーとして。
「フッツーじゃねぇよ。……それ、重症だぞ。いくら、お前がキャッチャーで、相手がピッチャーの…、しかも三橋だからとはいえ」
言いながら、泉は三橋に視線を向ける。
そして何故か声を潜めて。
「構いすぎだ」
そう言った。
何か反論をしようと試みたが、思いついた言葉を並べきれないでいるうちに、泉はさっさと着替え終わってしまった。
しかも、去り際にあいつが呟いたことって言ったらなんだ。
「三橋はバカだけど。阿部、お前は『三橋バカ』だよ」
って。
くそ。
何が言いてーんだよ。
俺が三橋バカだって?
三橋がバカなのは良いとしても。
俺にバカと言って良いのは、『野球』と付けたときだけだ。
視界の端で、三橋がチラチラと俺を見ている。俺が、不機嫌そうな顔をしてるから。
……三橋がこっちを見るとすぐにわかる。
すぐわかるように、俺は鍛えられている。
でもそれは、俺がキャッチャーに生まれ、キャッチャーに生きているからであり。
決して、三橋バカだから、な訳ではねぇんだよ。泉。
[back][next]
[戻る]
無料HPエムペ!