N
カ─────ン。
モモカンの打ち上げたボールが、青い青い空の中に吸い込まれていく。
「センターセンター!!取れるよーっ!」
ぱすっ。
キャッチをしたのは泉だ。
「ナイッキャーーッ!!」
田島の元気のいい声がグラウンドに響き渡る。
いつもと変わらない練習の様子。
いつもと違うのは、俺と三橋が立っている場所。
バシンッ。
「いいぞ花井ー。ナイスボー。」
「……ぜってー思ってねぇし。」
その顔。
と花井は俺の顔をみて苦笑いした。
今、グラウンドでチーム練習をしているのは三橋と田島のバッテリー。
俺と花井は、ブルペンにて投球練習をしている。
──昨日、モモカン、志賀先生と話をした。
全ての事情を俺なりに噛み砕いて伝えたけど、モモカンも志賀先生も、あまり納得はしていないようだった。
。
とりあえず、少しの間だけ。
そういうことで、俺と三橋のバッテリーは解消された。
いつもほとんど二人は一緒だったからね。マンネリ防止のために違う風を吹かすにはいい機会かもしれないね。なんてこと、先生には言われたが。
俺は、三橋が自分から言い出すまでは、バッテリーを組み直す気はない、ということも伝えた。
だからしばらくの間、メインは三橋と田島、そして花井と俺のバッテリー。
そして三橋次第では、もう二度と組むことのないかもしれない、三橋と俺のバッテリー。
来年までこの状態を引っ張って、新入生が入部してきたら、あり得ないことじゃない。
「気になんのはわかるけどさ。さっきからグラウンドの方チラチラ見て、お前、三橋なみにキョドってんぞ。」
「……そーか?」
「そーだよ。」
そんなはずは無いんだけど。
気のない言葉を花井に返す。
俺はもう、あいつのことなんか、三橋のことなんか、気にしないことにしたんだ。
だってあいつが俺のことを気にしてないから。
友情と言えど、片想いはもう懲りた。
昨日の放課後、三橋が女子に連れられてていく姿を見ながら俺は思った。
うまくやってんだ。
あいつは。
俺のいない場所で。
俺が知らない世界で。
野球という存在が、俺とお前を繋いでいなくとも。
あいつはやれるんだ。自分で言ってたようにやれるんだ。
俺はこんなにも傷ついてトイレに行くのも早弁するのも面倒になるほど落ち込んでいたのに。
三橋は平気なんだ。
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