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放課後。
帰りのホームルームが終わるとすぐに、俺は三橋のいる九組の教室に向かった。隣の隣だから、距離でいうと本当にすぐだ。
花井の言うとおり、もしかしたら三橋の少ない言葉で、俺は何か大事な部分を勘違いしているのかもしれない。そうじゃなくても、話をしたら解決できるようなちょっとした誤解かもしれない、そう思った。
そう思ったら、ほんの少し気持ちが楽になった。
俺は本当に、三橋に振り回されている。
花井が職員室の前でからかい半分で言っていたことも、あながち間違ってないなと思った。
はげしー片想い。
友情の片想い。
カッコ悪い。
しかもそれが全く三橋の望んでないものだったとしたら救いようがない。
報われない俺。
おっと。ネガティブになるのはやめよう。
嫌な想像はするだけ損だ。
九組のドアから教室を覗く。
掃除用具を出し入れする生徒の姿。
三橋の姿は見当たらない。
また逃げられたか。
と、思ったそのとき。
廊下から聞き覚えのある声がした。
「なになに!」
田島の声。
三橋も廊下か?
そう思って俺は振り向く。
──そこには、田島と三橋と、クラスの女子ふたりの四人組。
なになになにー?
と、興味津々というように三橋に詰め寄る田島と、そんな田島をちょっとちょっと、アンタはいいからと制止する元気のいい女子。
そして、三橋と、三橋のシャツの裾を掴んで何か話しかけようとしている、比較的かわいい女子。
それはまるで、うまく切り取った青春の一コマのようだった。
そして俺はそれを、自分でもビックリするくらいに客観的に見ている。
「三橋くんっ、ちょっと、話あるからこっちきて…」
「…うえ、あ、うん」
「なになになにー?!コクハク?!マジで告白?!」
「田島!空気読め!アンタはこっち!」
「えー!!三橋いいなぁー!!いいなーーっ!!」
元気のいいほうの女子に、ずるずると引きずられている田島。
そして三橋は、かわいいほうの女子に連れられて、俺の目の届かないところへと歩いていく。
誰かに説明されなくても全部わかってしまうくらいに、わかりやすい青春の一コマ。
最後まで俺は冷静に、ただ冷静にそれを眺めている。
…帰ろ。
三橋、忙しいみたいだし。
自分の教室に戻りながら、俺は急に、着ていた紺色のセーターを暑苦しく感じて、脱いだ。
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