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「失礼しましたーっ」
ガラガラガラ。
と、職員室のドアをしめた。
そして、まるで息を合わせたように立ち止まる花井と俺。
「つーか、阿部。」
「あ?」
「さっきの話、マジで?」
「あー。」
あー、ってお前…
さっさと先を歩き出した俺の背中に向かって呟く花井。
「まー、確かにお前らは、すごく上手くやれてるとは言い難いモンがあったけど…」
まさか、そんなにギリギリの状態だったとはな。と、花井は続けた。
…俺だって。
俺だってそう思ってたんだよ。
上手くはやれてないかもしれないけど、一日一日を過ごすたびに、少しずつ良くなっていってるって。
俺だってそう思ってたから、あいつが、三橋がそんなにギリギリの状態で俺とバッテリーをやってたなんて知らなくて、全然気付かなくて。
めちゃくちゃビビって、そんでもってすげぇショックだったんだ。
でも、今思えば。
「最初っから、噛み合ってなかったんだよ俺たちは。」
俺が、勝手に勘違いして、あいつにあーだこーだ構ってただけで。
泉曰く、過保護にしてただけで。
自分で言って何だかすごいむなしくなった。
あーあ。
「……って、何笑ってんだ花井。」
後ろで含み笑いが聞こえて、俺はムッとして振り向いた。
「……や、なんか。まるでお前が三橋にはげしー片想いしてるみたいで、笑える。」
そんで今、見事に玉砕して傷心中な。
楽しそうに花井は言った。
「きんもいこと言うんじゃねぇ!つーか余計なお世話だ!ほっとけ!そして笑うな!」
人の気持ちも知らずにバカにするような酷い男はこうだこう。
強烈なケリを何発かお見舞いする。
「いて!マジでいてーからやめろよ阿部!……つかさ、阿部。マジな話、先生にも言われたけどさ」
「なに。」
「もっかい、ちゃんと話してみろよ、三橋と。」
「……」
「話してみたら、なんか誤解とかが見つかるかもしれねーし」
つか、このままいって、とばっちり喰うのは間違いなく俺なんだよ。
とも花井は言った。
「わかってるよ。」
「ほんとかぁ?」
わかってる。
もう一回。
もう一回だけあいつに聞いてみる。
放課後、俺は一年九組の教室に行く。
誰でもない、三橋に会うために。
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