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「…阿部ェ」

誰かが俺を呼んでいる。
それはもうかったるそーに。
うぜーなぁ。
そんな声で起きてやるか、と俺はそいつを無視した。

「阿部。阿部!」

うるせー。うるせー。

「この……いい加減おきろ、このムッツリスケベ!!」

「ンだとぉ?!」

どこの誰だか知らねぇが、お前にムッツリと言われる覚えはねぇ!!
ガバァッ。と勢い良く顔を上げると、そこにいたのは花井だった。


「…ハァ。何だか知らねぇけど、不機嫌度マックスだなお前。」


ここは教室。
今は三時間目のあとの休み時間中。

花井に言われた通り、俺は不機嫌だった。

不機嫌どころじゃない。
史上最低のテンションの低さだ。

やる気が出ねぇ。
動きたくねぇ。
トイレ行くのも面倒くせぇ。
早弁もする気になんねーし。
教科書を出し入れするその一連の動作も面倒くさくて、俺の机の上には一時間目の現国の教科書が未だに置いてあったりするし。


机の上に顔を突っ伏したまま俺はずっと動かない。
そんな俺を見かねての、花井のさっきの言葉だった。


「お前さ。三橋となんかあったの?昨日。」

なんか軽い言い合いしてたみたいだけどよ。と、花井は早速、今俺が一番聞かれたくないことを聞いてきた。

ああ。
頼むぜキャプテン。
そこは俺の気持ちを汲んで少しそっとしといてくれよ。
おかげでテンションは下がっていくばかりだ。
もう何にもしたくない。
喋りたくない。

だけど、今日の俺には大事な仕事がひとつあるんだ。
どーにかして、モチベーション上げろ俺。


「花井、さぁ」
「ん?」
「今日も部活前に行くんだろ、モモカンとこ。」
「おお。どした?」
「……俺も連れてけ。」


やることは決まっている。



『阿部くんとのバッテリーを、解消したいんだ』


俺は、昨日の三橋の申し出に、『わかった』と答えてしまったから。

ちゃんとモモカンに事情を説明して、今日の練習メニューから、変えて貰わなきゃいけねぇんだ。


「良いけど。そんな思い詰めた顔して、まさか部活辞めるとか言い出しゃしねーだろなぁ」
「…んなこと言わねぇよ。」

でも俺にとっちゃ、そう変わりねぇことかもしれねぇ。





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