君が強くある限り。
どうやら此処は私が知っていた原作とは随分とかけ離れた世界らしい。ボスは自分にボンゴレの血が流れていないということを知っていながら其れを恨んでいる訳でもなく養子としてボンゴレに貢献しているし(だから当然クーデターなど起こさない)、スクセンパイは左手がある。まぁベルの双子が女である私な事から予想はしていたが。それに問題は少ないほうがいい。だから私としては非常に満足なこの世界。
あれから1年(早いとかゆーな)。ついこの間、容赦なく敵を殺していく姿からついた(とルッスーリアから聞いた)Cruel princess・・・残酷な姫、なんて通り名を頂いた。何故イタリア語じゃなく英語?と思ったが、マフィアはイタリアだけじゃなく世界中にいる(何処にでもではないだろうが)。なら多くの地域に広まっている英語の方が伝わりやすいじゃないか!と前世でクラスメイトが「プリンス・ザ・リッパーって何でイタリア語じゃなく英語なんだろう」と問うた隣のクラスの今井さんに語っていたのを思い出す。そんな感じなんだろうと自己完結してそれっきりだが。
話が大分それてしまった。
とにかく、我が弟にも原作通りの通り名がついて任務にいくたび敵に其の名を叫ばれるようになってうんざりしていたところ、以外に(以外でもなかった気はするが)苦労人だったスクセンパイから長期任務を言い渡された。9才の、しかも女の子に1人で日本ってどうよ、と思ったが口には出さないでおく。
そんなわけでフェルメールになってから初めて日本に来た。1週間も早く任務が終わり、残りの期間は遊んで過ごそうと決め此処ら辺の地図を見たらあらびっくり、並盛町まで30分で着く。興味を持ったんで行ってみたらいかにもそっちの趣味持ってますって感じのおじさんに声をかけられ触ろうとしてくるものだから思わず一本背負い。人がつい先ほどまでいなかったものだから安心していたのだが、背後から視線を感じたので思わず振り返る。其処にいたのは黒髪黒目の将来風紀委員長になるであろうあのお方だったのだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・何?」
だんだんいらついてきたので用事を問うてみる。
「君、強いの?」
「・・・弱くはないと思うけれど君が強いと思うかどうかは分からないよ」
「ふぅん」
なんなんだ一体。
「僕は雲雀恭弥、君は?」
「・・・・・・・・・・・・フェル。フェルメール」
「そう。この辺で初めて見るけど、観光?」
「そんなところ」
答えたら踵を返して反対方向に歩き始めた。なんなんだ一体。意味ワカンネー。呆然とその後ろ姿を見ていたら急に振り返った。少し驚いていたら彼は私の目を見て口を開いた。
「また、会える?」
・・・・・・話の流れがまったく掴めない。寂しそうに見えるのは気のせいなのかどうなのか。
「分からない。けど、」
一度言葉を切り空を見上げる。薄く広がる雲。
「・・・・・・君が『孤高の浮雲』ならば、きっと」
意味は分かっていないようだがいいだろう。彼は考える素振りを見せ、再び背を向けた。
「またね、フェル」
「!・・・うん、またね。恭弥」
君が強くある限り。
掴めない性格だ、なんて。
・・・・・・人の事言えないけど。
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