優しいの境界線なんて知らないので。 気がついたら僕は知らないヒトに抱かれていて、フェルメールと呼ばれて。 ベルフェゴールの双子の姉になっていた。 二卵性とはいえ、姉弟なのだから私達はよく似ている。 だが私達の仲は悪くない。むしろ良い。仲良しだ。 その代わりなのかは知らないが、1つ年上のラジエル兄様と仲が悪い。双子だから嫌いあっていたのではなく性格的に合わなかったのかと初めて2人の喧嘩、否殺し合いを見て思ったのを覚えている。 だが今改めて考えてみるとそれは違うように思える。兄様とベルは似ている。コミックスにあった2人並んでいる絵そのものだ。私達を初めて見た人は兄さんとベルが双子だと思うことが多い。 同じ顔ということに嫌悪を抱いているのではないだろうか、というのが私の考えだ。聞いて知りたいと思うほど興味は無いが。 「フェルー!!」 「・・・ベル」 背後から抱きついてきたのは弟のベルフェゴール。 私は顔を見ることなく目の前をじっと見ていた。 「なになに?やりたくなかったワケ?」 「・・・んーん。そうじゃない」 目の前にいる・・・いや、目の前にある自分の親だったソレを見る。 「兄様は?」 「終わった。あっけなかったしー」 「ホント」 命とはなんて脆いのだろうか。心臓にナイフを1つ。たった1つで死んでしまった。 「使用人は・・・」 「終わったよ。1人残らずやっちゃった」 「さっすがフェル!!で、これからどうする?」 どうする、か。 城の人間を皆殺した。父様も母様も兄様も執事もメイドも、みんな、みーんな。殺した。だが、私達はまだ子供。自分達で生きていけるほどの力は無い。城で暮らすのも無理だろう。誰か受け入れてくれる場所を探さないと。 思い浮かぶのはヴァリアー。そうだ、暗殺部隊に入ろうか。忠誠を誓って、命令を聞いて、任務をして、そしたら私達は生きていけるだろう。生かしてくれる。使える人間だと認識させればいい。 「ヴァリアーにでも行こっか」 「ヴァリアーって、あの暗殺部隊?ししっ、いーよ。おもしろそーだし」 一度も振り返らなかった。振り返る理由など無かったから。兄様は死んだのだろうか。オルゲルトとかいう執事はズタズタにして心臓を抉り出してやったから確実に死んでいるだろう。未来編はどうなるのだろうか。どうなろうとどうでもいいけど。 「 フェルメールになる前の記憶が頭をよぎる。同じクラスの不登校の子と会ってほしいと言われて会ったら質問攻め。その全てに答えたら泣き出されて、部屋の外にいた担任に言われたのだ。何故今になってこんなことを思いだしたのだろう、分からない。ただそのとき、こう言ったのだ。 「優しく?これが僕なりの優しい接し方ですよ。違うというなら教えてください。僕は何処から何処までが優しいと言えるのか知らないんで」 優しいの境界線なんて知らないので。 今の私は非情?悲劇のヒロインならなんて言うのだろう。 → [戻る] |