[携帯モード] [URL送信]
凛様 相互記念T
一輪の紫の薔薇



馬鹿やって互いに笑ってこんな日常がずっと続くと思っていた

ずっと、友達以上恋人未満の関係が続く気がしていた

そんな、親友とは言えない微妙な人間に

私は常識外れな事をされた

「…なに、これ」

今の私はきっと狐につままれたような顔になっていると思う

余りにも不自然な現象

人為的、作為的、そう例えてもおかしくない変化…、

…いや、変化は一つだけの筈なのに

変わりすぎて、ある意味落胆する

なぜなら、手にかけたドアの先は私の部屋の筈だった

…でも、

ドアを開けるとそこは別世界のようだった

部屋全体、至るところに広がる紫に、むせかえる香り

敷かれた、たくさんの紫の花弁

これは、…薔薇?


どっしりとした紫の色は部屋を支配していた、

困惑する私を一際惹き付けた物が机の上に、一輪だけ咲き誇った紫の薔薇が置かれていた

後は名前しか書かれていないメッセージカード

他の薔薇の花弁は全て散らし部屋に敷き詰めていた

しかし、机の上の薔薇だけはしっかりと形を保ち私の目を惹き付ける

そして薔薇と一緒に置かれていた一枚のメッセージカードに書かれていた名前


―六道 骸―


なんの悪戯かと思った。


すぐに携帯を取りだし疑問と苦情のメールをした、

なのに数分待っても返事は返って来なかった

返信もしない、あまつさえ不法侵入してまで部屋汚すとか


「…喧嘩売ってる?」


返事の遅さに痺を切らし苛つきながら電話をかけ机の上に置いてある一輪の薔薇を手に取った、

見れば見る程濃い紫の色の薔薇

不本意にも部屋に漂う香りや手の中にある薔薇に酔いそうになる

それにしても、本当に一体なんの真似なんだろうか


繋がらない電話に部屋の現状それに多少は苛ついた、だけど、このたくさんの敷かれた薔薇の花弁に悪い気はしなかった

そんな事を考えていると呼び出しコールは長引き骸はなかなか出なかった

四回、…五回、…六回

と、過ぎても、骸はなかなか出ずそろそろ留守番サービスに繋がりかけた時

耳元に電話が繋がるブツリと言う独特の音が聞こえた

「骸、一体なんのマ…」

「…もう、関わらないと決めていたのに」

溜め息混じりの言葉に少し頭に血がのぼり少し苛ついた言い方をした

「人ん家に不法侵入なおかつこんな悪戯しといて何よそのいいぐさ」

「ああ、その薔薇、僕からの最後のプレゼントですよ」

「悪趣味…っていうか最後?」

「ええ、最初で最後のプレゼントです」

「…一体どうゆう風の吹き回し?」

「いえ、ただもう二度と会えないのでしたら何かプレゼントしたいと思うのはおかしいですか?」

「は?会えない…?」

「ええ、二度と会えなくなりますから」


いきなり何言っているの?

さっきまで笑いながらいつもの三人と私とで途中まで帰ってバイバイと手を振りあってまたね、って言ったのに

「…どうゆう事」

「…だから、会え」

「違う、なんで私にこんなの贈ったの?」

「…こんなのとは、あんまりですね」

「だって、…そうじゃない、二度と会えなくなるからって何故私に贈ったの?」

「…理由なんてありませんよ、気まぐれです」

「気まぐれにしては手が込みすぎよ」

恋人でも無いのになぜこんな驚く事をされるのか分からなかった

二度と会えなくなるから?

確かに別れは辛い面もあるわ、だからってこんな手の込んだ事をされる覚えなんて無いわ

「まあ…そうですね、あえて言うなら貴女に好きと言いたくないからです」

「…は?……それは遠回しに嫌いと言ってる訳?」

嫌いと言いたくてこんな事した訳?

嫌がらせで、こんな事した訳?
言い表せない怒りが込みあげてくる

今まで笑ってきた日を楽しいと思っていたのは本当は私だけだったのかと思うと次に悲しくなり涙がでそうになった

「いいえ、好きだと言えば未練が残ります、だから花を贈ったのです」

「は…馬鹿じゃないの?」

じゃあなに?結局は好きの変わりに花を贈ったの?

それは、好きだと言いたいの?



「ただの馬鹿よ」

こんな事をされても分からないわ

どうせ、言うなら、伝えたいなら貴方の口から直接聞きたい

さよならも好きもちゃんと言って欲しかった

「勝手じゃない…!そっちはいいかもしれないけど私はどうなるのよ…!」

「庵?何を…」


私だって好きだった

ただ、今までの関係を目の前に気付かないフリをしていたのに
壊したくないから見てみぬフリをしていたのに

私だって…好きだったのに

ずっと、黙っていたのに

関係が壊れて、壊れた

ああ、これは一歩踏み込む勇気が無かった私がいけなかったの?

「……私も骸が……!」

「庵…!?駄目です、言わないで下さい」

「ぇ…?」

「言ったでしょう?未練を残したくないんです」

未練を残したくない…?

貴方は良くても私は残るわ

「…卑怯じゃない」

自分は未練を残さず

さよなら≠煬セわず

咲き誇る紫の薔薇の変わりに消えた最愛の人

「…大嫌い」

なんて、傲慢なの?

さっきまで笑い、じゃあ、またねと言って

消えた貴方は

紫の薔薇を残した


「会えなくなるぐらいなら何も残さないでよ…」


何も残さずに忘れさせて欲しい
忘れて、こんな事もあったと、こんな人も居たと未来で笑わせて欲しかった

「大嫌い…!」

左手に持つ薔薇を無意識に握り締め棘が手に食い込み血が手首の下へと伝う

「そう…それで、いいのです嫌われた方がずっといい」

「ッ……!サイテー…」

私は貴方をずっと忘れられないじゃない

好きとも言えずに居なくなるなんて、

貴方は酷すぎる

涙が流れ薔薇にかかっては涙を弾く

「…もう、時間です」

もう、繋ぎ止める事は出来ないのね?

「そう……何処に行くの?」

「…言えません」

「…なんでよ」

「クフフ、こう言えば君は僕を忘れないでしょう?」

「当たり前よ、そしてもっと嫌いになるわ」

「それじゃあ、尚更です」

「アンタって本当にサイテーね」

「クフフ、僕はいい人間ではありませんから」

涙がずっと目からこぼれ落ちしまいには声がかすれただ黙るしかなかった

「…さようなら、またどこかで会いましょう?」


またどこかで会いましょう


二度と会えないって言っていたのに何を言っているのだろうか?

その言葉に矛盾を感じつい笑ってしまった

貴方は矛盾だらけね

この薔薇も…、

会うつもりは無いのに会おうだなんで

関わらないつもりだったと言いながら私の電話に出た貴方は

矛盾の塊だわ…

だけどね?

「ふ…そうね、…来世なら…会ってもいいわ」

その矛盾した感情も

貴方が、良く言っていた輪廻を今は信じてあげる

「クフフ、…そうですか」

「ええ、さよなら大嫌いな人」

そう言うと骸は何も言わずブツリと電話を切った

「骸、最後まで好きと言ってくれなかったのね」


…骸?、私は貴方の事が好きだった分だけ憎いわ

でもね、そう思うとあまり悪い気はしないの

この薔薇の様に

だって、嫌いな分だけ好きならこの気持は嘘じゃなかったと確信できるじゃない?

手に握る薔薇を顔に近付けた

…甘い香り

「ねぇ、骸…」


知ってる?

赤い薔薇は情熱って良く言われるけど


紫はなんて言うか知ってる?

それを分かって贈ったの?


「紫の薔薇はね…」


ずっと君を見ています


確か、そんな花言葉
…本当にずるい


私は会えないのに貴方は私を見ているつもり?

敷き詰められた薔薇に身を置き香る甘い空気に私は目を閉じた

「全部、矛盾しているわ…」

貴方が言った言葉も私の言葉も全て、私の本心も貴方の本心も全て

…矛盾している

そんな、よく分からない気持の中で私は泣き疲れ眠ってしまった

紫の薔薇を側に置きながら



凛様、有難うございました!!

[*前へ][次へ#]

8/15ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!