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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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主夜は、麻に紫陽を取られてしまったようで、なんだか面白くない。

「はい、ありがとうございます」
紫陽が笑う。
まるで太陽のようだ。

「そうそう、紫陽坊ちゃまは笑っていらっしゃるのが一番でございますよ。さあ、食堂へどうぞ。今日は坊ちゃまの大好きな、トマトのリゾットでございますよ」

「わあ、麻さん、大好きっ」
「ほっほっほっ。さあ、行きましょう」

食べ物に釣られる紫陽も紫陽だが、釣る麻も麻だ。

〈俺は紫陽に一度も大好きなどと言われたことがないのに…〉

主夜ははっとして立ち止まる。

〈今、何を考えていた…?俺は紫陽に大好きと言われたいのか?〉

「主夜さま、お早くどうぞ。冷めてしまいますよ」

麻の声がかかって、主夜は小さく頭を振った。


〜〜〜〜〜〜〜


〈とてもここが豊かな自然に囲まれた、東京の外れとは思えないな〉

ビルが立ち並ぶ街へ出て、主夜はあたりを見回しながらそう思う。

嫌いなはずの街の喧騒が、今日は少しも苦にならないのは、隣にいるのが物を欲しがる女ではなく、紫陽だからだろうか。

「どこか行きたいところはあるか?」
隣を歩いている紫陽に、優しく尋ねる。

街を歩きたかったわけではない。
掟を学んで、沈んでいた紫陽の気持ちが、少しでも上向きになればと思って連れ出したのだ。

もっとも、あまり面白くないことに、紫陽の気分は麻の手料理で回復したようだったが…。

紫陽が主夜を見上げて、かわいらしく首を傾げてみせる。

「ぼくはあまり街のことをよく知らないので…。あ、でも、街のどこからでも陰陽寮へは帰れますから、主夜さまを迷わせるようなことはしません」

「そうか」
主夜の手が、そっと紫陽の頭に乗る。

「では、映画でも見ようか」
紫陽が嬉しそうな顔をした。
それを見て、主夜も嬉しくなる。

「映画は好きか?」
「はい」

「この街の映画館では、今、何をやっている?」

紫陽がいくつか映画の題名を挙げた。

「その中で、紫陽が一番見たいものを見よう」

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