小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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「もちろんさ。僕は星のだから。…でも、主夜のことは好きになってもいいよ。あれは誰のでもないから」
「はい」
「黎、いい加減にしろ」
怒られちゃった、と、ぺろっと舌を出して見せる黎に、紫陽がくすくすと笑う。
笑顔がとてもいい。
これならきっとうまくやっていけるだろうと、主夜の瞳が優しくなった。
「明日の朝、9時にここに来るように。遅刻するな。俺は厳しいぞ」
もう一度、紫陽の髪をくしゃりと撫でる。
「はいっ。お邪魔しました」
「あ、俊也は来なくていいよ。僕のほうから、明日10時に修術所に行くから」
「はい。では、失礼いたします」
部屋を出て行く俊也が、一瞬主夜を睨みつけた。
目ざとい黎がそれを見て面白そうに笑う。
「俊也、大丈夫だよ。紫陽ちゃんを君から取り上げたりしないから」
「!!」
俊也は返事もせずに、逃げるように紫陽の後を追っていった。
「まあ…!あの陰陽の者は、礼儀知らずですこと」
麻の言葉を聞き流しながら、主夜は明日からの紫陽の教育を楽しみにしている自分を、不思議な思いで見つめていた。
〜〜〜〜〜〜〜
紫陽の記憶力はいいようだ。
主夜は紫陽が音読をしているのを聞きながら、ほほ笑んだ。
普通、鬼が陰陽の術者たちにする教育は、鬼と神と人の歴史、その他にそれぞれの掟や、三者共通の法律、そして退妖の術だ。
紫陽の場合は他の術者たちとは、まるきり立場が違うのだが、珠の宿り手であることや、出生のことを考えた時、知っておいたほうがいいだろうと、主夜は陰陽の術者たちが受けるのとまったく同じ教育を、紫陽に施そうと考えていた。
歴史は語って聞かせるだけで覚えてしまったし、掟や法律も一度音読をさせれば、ちゃんと覚えている。
この一週間で、机上の勉強はほとんど終わっていた。
〈来週からは術を教えなければならないな〉
紫陽の声は耳に心地よくて、終わらせてしまうのが残念な気もするが…。
「神の掟、11条…」
紫陽の声がふと止まった。
「どうした、続けろ」
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