小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
14
主夜は黎を指さした。
「子供だって、黎にはよくなつく」
「黎はダメよ。極秘裏の命令とはいえ、珠の宿り手を守り教育するのよ。言い換えれば鬼界の代表だわ。鬼王が黎の格好を見て、うんと言うものですか」
「主夜、お願いします。せめて、玉の宿り手が出て、紫陽に神族の手出しが及ばなくなるまで、あの子を守り、教育してください」
「……」
「何を迷ってんのさ、主夜。君には選択の余地なんかないんだよ。そんなに子供の扱いが不安なら、星を連れて行けばいいじゃない。星は子供好きだよ」
「…わかった、引き受けよう。だが俺は他者に術を教えたことがない。紫陽が術を使えるようになるという保証はないぞ」
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東京 奥多摩市
今だ自然が色濃く残っているこの地に、一部開けた街並みがある。
その街並みの後ろに控えている、標高400mほどの小さな山を丸ごと敷地として、陰陽寮は存在していた。
500年前、5人の人間とそれを教育するための鬼5名で始まった陰陽寮は、現在12家族、48人にも増えている。
陰陽の頭(おんみょうのかしら)と呼ばれる、術者たちを率いている者の家を中心に、11家族の家が点在し、その他に陰陽の子供たちが20歳になったとき、鬼に術者としての教育を受けるための修術所がある。
それらをまとめて、陰陽寮と呼ぶのである。
〈そう悪いところではないな〉
陰陽寮へと続く山道を歩きながら、主夜はあたりを見回した。
ここへ来るのは二度目だが、前回は鏡道を通ってきたので、街並みも山の中もまったく歩くことなく帰っている。
〈もっとも、あの街並みはいただけないが〉
都会じみた街は、いつでも主夜をウンザリさせる。
物を欲しがってすり寄ってくる女たちを思い出させるからだ。
一人の男が山を下って来ているのが見えた。
男は石と木の根で歩きづらいけもの道を、平坦な道を行くようにすいすいと下ってくると、主夜の前で立ち止まり、深々と頭を下げた。
「主夜さま、お久しぶりでございます。ようこそおいでくださいました」
「頭を上げられよ。堅苦しい挨拶はいらぬ」
「はい」
主夜は上げられた男の顔をじっと見た。
「どこかで会ったか?」
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