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V
気付いたときにはそこはどこかの空き家のようで隣にはおまえがずっといてくれた。どこか気恥ずかしかったけど嬉しくて、そして少し泣いた。僕が起きたことに気付いたおまえはあの時も同じ台詞を吐いた。それはまるでオレとどこか似ている目だな、と言った。 


『同じ世界で同じように母から生まれて育ってきたのに普通の人間からみたらオレたちは気味悪い存在としか見ていねぇ。そりゃ最初はオレも悲しかった。誰かに自分のこと認めてもらいたくて必死にガキのときから人間の大人に媚び売ったりとにかくいい子でいようと思った。でもそんな気持ちもいつしか薄れていって今じゃ気楽に独り身やってるけどでこれでも何とかやっていけてるし清々したとも思ってる。おまえの目を見たとき確信したよ。おまえもずっと孤独の人生送ってきたんだな、てよ。ずっとこんな生活してるんだ、同じような奴かどうかは目を見りゃ一発でわかるようなもんだ。』


そんなこと言ってくれたのもおまえだけだった。
誰もわかってくれないこの胸の内をおまえだけがわかってくれた。僕はただあいつの裾をギュッと弱々しく握った。


「鬼太郎…?」

ずっとずっと淋しかった
一人で産まれてきたときは小さいながら僕は孤独なんだと確信した。捨てられたときもやっぱり僕は孤独なんだとまた思い知らされた。
うんざりだった
ヒーローだって言われてても心の内ではこんな世界が滅びようがもうどっちでもいいとも思った。



それでも
僕はおまえと出会って変わったんだ。誰かに側にいてもらえる安心感、そして温もりを感じられた。
そしてなにより人を「愛する」という感情。お互いそんな感情を知らなかったからこそわかりあえたこの気持ち。今の僕がいるのもやっぱりおまえのおかげで。



「今だけでも…

そばにいてくれるか?」


普段なら絶対にこんな台詞は言わないけど、今日だけは特別。



「…鬼太郎」
返事の代わりに温かい抱擁。ああ本当に安心する。




涙は未だに止まらないけど
なんだろう今はこの雨がとても愛おしいのだ。

それはきっと僕とこいつを引き寄せてくれたから
僕はこんな世界でも一生懸命生きていこうと思ったんだ




僕の心の闇に降り注いでいた雨は少しずつ乾いていく気がした





Fine


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