親子っていうか(銀時+夢主) 「暁人君………イッショニネマセンカ」 「……………………」 拝啓しんちゃんへ。 今俺の目の前にものすごぉーく情けない大人がいます。 +++親子っていうか+++ 深夜零時を回った頃。 刀の手入れを終えた俺は刀身をしばし眺め、満足したようにニッと笑うとそれを鞘にしまった。 よし。綺麗になった。 襖から布団を引っ張り出してさあ寝ようという時、不意に隣のリビングの襖がすっと僅かに開けられる。 ん?と思って暗闇の中そっちに視線を送ると、襖の間から天パ…もとい銀時が俺を見つめていた。 表情がすんごく気分悪そうに青ざめてて幽霊みたいなんですけど。 というか今何ていいました? 「………はい?」 「イッショニネマセンカ」 …………えーっとぉ、 「ご遠慮したいです」 「ソンナコトイワナイデクダサイ。ホントマジデオネガイシマス」 「てゆうかなんでカタコトなんですか」 てゆうか大の大人が子供と寝たいって素でドン引きなんですけど。 俺の軽蔑したような視線に銀時は少しひるむが、恐怖心の方が勝ったらしい、バタバタと俺の布団の側までやってくると泣きそうな顔で縋りつかれた。 貴方銀魂の主人公ですよね? 「ホント頼むよオオォオォ暁人ーーー!! 今日意地張って神楽とホラー映画見に行って以来部屋の四隅が異様に気になるんだよオオォオォ!!」 「そんなん銀時の自業自得だろーーー!? やだよ銀時と引っ付いて寝るなんて! 加齢臭移りそうだもん!」 「銀さんはまだピッチピチだアアァアァ!! 心は暁人と寸分も変わらない少年だから! 少年だからこそ正体不明のなんやかんやに武者震いしちゃう年頃っていうかさぁほら、原作の主人公に何かあったら大変じゃん!」 「大丈夫主人公はなかなか死にはしないから! 目ぇつぶってたらいつの間にか寝てるって!」 「目ぇ閉じた後ふと目を開けたら目の前になんかいたらどうすんの!? 俺ビビッ…焦るよ!?いくら銀魂の主人公でも咄嗟には動けないよ!?」 「あ゛ーーー今更怖がりなところをひた隠しにするその態度が非常にうざいんですけど! 諦めて寝ろーーー!!」 「全てさらけ出せばいいのか!? 銀さんの汚いところもカッコイイところもさらけ出せば暁人は受け止めてくれるのか!? そんなのわかんないじゃんドン引きされるかもしれないじゃん!? −ーって待てっ暁人君布団被んないでエエェエェ銀さんともう少しお話しようー!?」 すぐ側で喚いている銀時を無視して俺は布団を頭まですっぽり被る。 いい加減このでっかい大人に付き合いきれません。 「暁人ーーー!? ちょ、まだ寝ちゃダメだってば!銀さんを置いてかないでエエェエェ!! え、マジで寝ちゃったの!?」 泣きそうな銀時の声が響く。ホントに威厳ないなーこのおっさん。 その後しばらく静寂が続くと、銀時が俺の隣で体育座りする気配がした。 「暁人くーん?ちょっと、寝たフリすんなよー。シカトされたら銀さん軽く傷つくよ?銀さんのガラスのハートは粉々だよ?」 ちょいちょいと頭らへんをつつかれる。 銀時のうざさが2上がった。 「今度アイス買ってあげるからさー。好きなだけ買ってあげるからさー。 だから頼むよー今なら雪見だいふくもつくぞ?」 一瞬起き上がり「ほんと?」と聞きそうになってギリで堪える。 危ない危ない。 そ、そんな手には、のらないんだからっな! とか思いつつチョコバーとガリガリ君追加されたら銀時と一緒におやすみしてもいいかなぁしんちゃんとか思い詰め始めてる俺は既に負けてるような気がする。 うわーんしんちゃんどうしようううぅうぅ!! 内心泣きそうになりながら加齢臭とアイスどっちをとるか悩みに悩んでほぼ答えが出かかっていると、急に静かになった銀時がぽつりと呟いた。 「……今なら、こっそり布団に入ってもばれな「天誅ううぅうぅ!!」 「げはぁっ!!」 思わず飛び起きてダウンアッパーをくらわせてしまった。 いや、今のは仕方ないよね。完全に自己防衛だもんね。 この天パ野郎ーーー!! 「暁人起きてたのかよ!」 「脇であんなうっとうしく話されて寝れるかー! 俺の布団にこっそり入るなんて言語道断! 俺の隣はしんちゃん限定だもんね!」 「なんで高杉がよくて俺はダメなんだーーー!! あいつもオッサンじゃん!俺とおんなじじゃん!」 「しんちゃんと銀時を一緒にしないでよ!しんちゃんは加齢臭なんかしないもん!なんかいい臭いだもん!」 「んなのどーせ紫煙の匂いかなんかだろ? 喫煙してなかったらな、あいつもきっとオッサンの臭いしてるぞ」 「しんちゃんはそんな臭いしないもん!」 「いーやするね。暁人、高杉はアイドルかなんかじゃないんだぞ、フツーのオッサンなんだぞ。 今はオッサンの臭いがしていないかもしれないけどあと数年すればあいつも立派なオッサンになんの。 大体お前高杉のことすんごく慕ってるけどよぉ、あれだぞ、高杉はぶっちゃけアホの子だからな。 昔っから先生に金魚のフンみてぇにくっついててよー年中薄着で必ず風邪引くくせに上着着ねぇしカッコつけだしバカだしチビだし」 「………………」 「それに比べて銀さんはいいぞー銀魂の主人公だしカッコイイし皆のヒーローだし。 ということで暁人君は俺と一緒におやすみしよう!なんなら子守唄も歌ってくれてもいいから!」 「……………しんちゃんを悪く言うのは許さない……」 「………ん?」 その時初めて銀時は俺の異変に気付く。 なんかもう物凄くムカついた俺は無言で立ち上がると刀をすらりと抜く。 嫌な予感がした銀時は引きつった笑顔で後ずさりし始めた。 「暁人!じょ冗談だよ! お、俺の大親友である高杉君のことを本気で悪く言うはずがないだろオオォオォ!?」 「銀時ー。知ってる? 今まで俺の前でしんちゃんの悪口言った奴は胴体が繋がってないんだよ……?」 「イヤアアァアァ殺人予告!!」 結局その夜銀時は夜が明けるまで俺に追いかけ回され、一睡もできなかった。 アイスたくさん買ってくれるって言ったからしかたなーくやめてあげたけどね! いやホントに嫌々だから!しんちゃんが1番大事だからね! 「なーにを買ってもらおっかなー♪ えーっとハーゲンダッツとガリガリ君と雪見だいふくとチョコバーとアイスの実とモナ王とアイスボックスと牧場しぼりとー♪」 (…現代に……鬼がいた……!) END +++++++++++++++++++ 親子というより悪友みたいな銀時と暁人。 ひたすら銀さんが可哀相になりました(笑) よく考えたら銀時+暁人夢ってこれが初だねー。 (愛の差) [*前へ][次へ#] |