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ブルー・マンデー(藤原スズメ)完
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「月曜日は必ず来るんですよ」
 僕は驚き、それから怒る。僕はそんな、別に月曜日が来て、仕事の始まりを実感して憂鬱になるわけではない。物憂いんだ。状況が。自分が。世界が。疲れたんだ。嫌なことばかり堆積して地層みたいにのしかかって来るのに。僕の憂鬱の理由はそこまで安っぽくない。
 僕は白河を睨もうと思った。罵倒しようと思った。
 でも、そんな決心や雑念や煩悩は白河の目を見た瞬間にどこか遠い彼方へ吹っ飛ばされる。白河の目は、僕を見ていた。僕だけを見ていた。僕のことを心配して、どうにかしたいと、そう願う気持ちが溢れた、やさしい目だった。
 あるいは白河の言葉は、自分自身にも向けられた言葉だったのかもしれない。憂鬱で仕方ない月曜日は、残念なことに必ず来る。でもそれはみんな同じだから、だからもう少し踏ん張るべきなんじゃないかって、そう僕に、そして白河自身に言いたかったのかもしれない。だけど、正直そんなことはどうでもいい。僕を暗い海の底に繋いでいた鎖は砕かれた。今、ここには僕がいて、君がいる。
「そうだね。確かに、そうだ。白河の言うとおりだ」
 見栄を張るのは、やめた。僕はやっぱり普通の人間だ。女の子を泣かせてしまうくらい無力な一人の人間だ。自分とも向き合えない卑怯者だ。僕は誰にも理解してもらえないじゃないかと怯える小心者だ。だけど、
「白河に会えて楽になった。ありがとう」
 僕を分かってくれようとしている人が目の前にいる。それだけで僕は幸せだし、満足だし、少しは前に進めると思う。
「まだ精神的に辛いけどさ、もうちょっと、踏ん張ってみる。だから、白河」
 僕は白河に、少し、救われた。今度は僕の番だ。今度は目をそらさない。僕は不安げな白河の目をしっかりと見て、言う。
「一緒に踏ん張ってくれないか。一人で、昨日までだったら出来ないことも、二人で、今日なら出来る気がするから」
 月曜日はどんな時でも憂鬱だ。占いの結果は良くても、気分は暗くて沈んだまま。気持ちはブルー。梅雨で雨が降っているとなれば尚更だ。理由はよくわからないけど、月曜日はいつだって悲劇的で憂鬱だ。そう喚いていた時期があったし、今だってべつに克服したわけでもない。耐えきれないような出来事は確かにあるけれど、悪いことばかりがそう続くものではないと、半信半疑どころか疑ってすらいるような僕な訳だけれども。
 それでも、僕は青い月曜日を乗り越え続けたい。君となら、それが出来る。

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