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短編小説対決

 一年生の教室は四階で、五組は一番端にありました。教室にはまだ誰も来ていなかったので、一番後ろの自分の席で持ってきた小説を読みふけっていました。主人公が作り出したコンピューターウイルスが暴走して、世界を破壊してしまうのを防ぐという話です。彼女はコンピューターを使ったことがありませんでしたが、それが大変な話なのだということは理解しました。
 七時五十分。八時十五分から朝の会なので、そろそろ誰か来てもいい頃ですが、今日の五組は遅いようです。彼女は階段を駆け上がる音や廊下の話し声を聞こうと耳を澄ましましたが、何も聞こえませんでした。
 八時。まだ、誰も来ません。彼女は何かおかしいと思いました。まさか、もしかして……そうだ! 今日は、お休みの日だったっけ? だとすれば、全て説明がつきます。ああ〜、やっちゃった……。なんだか、一気に自分が空しくなりました。朝はあまりに急いでいたので、カレンダーも予定表も見る暇が無かったのです。絵の事が気ががりで、重要な事を見落としていたようでした。こうなったら……誰にも見られないように、急いで帰る他はありません。途中で制服姿を見つかったら、なんて思われるだろう? 帰ったら、親にはなんて言われるだろう? 彼女は悔しくてしょうがない感情を抑えつけ、鞄と手提げ袋を持って教室を出ました。階段を降りながらも、彼女は自分の失敗を悔やみました。親への言い訳を考えながら下りる階段は、いつもより長く感じられました。


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あきゅろす。
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