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リレー小説第弐
8
 山岳地帯の不毛な斜面に今にも滑落しそうな位置を陣取っている南部独立同盟の参謀本部は、不可解な状況に直面していた。
 「だめです、リュースバルク号、応答しません」
 「何故だ? Jウェーブはもう切ってある筈だ」
 カギハラ提督は首をひねった。そして、一つの結論に辿り着いた。
 「まさか。船ごと、やられたのか」
 全く、これで10隻目だ。どのような方法で近づいても、政府管轄の施設に潜入する事が出来ない。政府は一体何を隠しているんだ? 想定出来るのは、何らかの兵器……オートマトンか、或は核兵器か? とにかく、今回沈められたのは小さな工作船や哨戒艇ではなく、れっきとした戦闘巡洋艦だ。
 「痛い損害だな。あれほどの船をまた手に入れようと思ったら、後5年は待たねばなるまい」
 カギハラ提督は背後の兵士に振り返った。
 「南部市民に通達しろ。いや、マスコミ全体に流すんだ。肥え太った北部の政府軍が我々南部の戦艦を撃沈した。これは戦争行為に等しい、と」
 「わかりました。では、国営放送をのぞく全てのウェーブ発信社に協力を要請します」

 二人がステーションを文句たらたらに立ち去ってから5分後、再び正面扉を開く者があった。外側からではなく、内側からである。
 「あー、疲れたー」
 ぼろをまとった少年は、やたらと高価そうな帽子をかぶり、全く珍妙な姿という他はなかった。
 「あっれー、服が……」
 彼はぼろに気付くと目を丸くした。そう、この服はつい先ほどまで彼の帽子と同じくらいに見栄えのする物だったのだ。
 「やっぱり運動すると服が耐えられないなー。こんどギルさんに新しい服もらおう」
 少年はかかとをさすりながらステーションを後にした。


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