リレー小説第弐
10(但し終わる気配なし
アルトゥールとゼノビアはアドマスタ・ヤナティに呼び出されて彼の書斎にいた。ギルバートは留守で暫くの間ここには戻って来ないらしい。その理由をアルは聞いてみたが、アドマスタの返答は彼が予想だにしていないものだった。
「寧ろ俺の方が知りたいくらいだ」
アドマスタの目は二人を嘲笑っているようにさえ見えた。
「お前らはもう司令官に飼われているのか?」
「は?」
「いや、何も知らないのだな。その情けない表情から察するに」
アルトゥールは目の前の男を睨みつけたが、アドマスタはそれに気付いているのにも関わらず舐めまわすように二人に馬鹿にした視線を向けるだけだった。
「私たちを無理矢理に召還した理由は?まさか嫌味を言うためではないでしょう?」
「…………」
普段なら直ぐにでも相手を罵るアドマスタが突然黙り込んだ。余りに不気味なことに二人からも一切の言葉が出なくなる。もしかするとこの男の機嫌を大幅に損ねたのではないかとゼノビアは少し焦ったが、どうやらそうではなかったようだ。
「お前たちは」
大きな溜息の後にアドマスタがやっと口を開く。
「自分が能力の代償に何を喪ったか覚えているか?」
「無論だ」
「何故だ?」
二人が質問の意図を解りかねて一瞬の間が空く。
「何故、喪う必要があった?どうせお前らはそんなことを考えたこともないだろうがな」
「それは……」
「命令をただ遂行することしか念頭にない無能なお前らにいくつか考える手掛かりをやる。あの機械が何か知っているか?言われたことを愚直にこなしていたらどうなっていたか知っているか?ギルバートはそれをお前らに説明したか?」
「ア、アドマ……」
「お前らの最後の仕事として、自由を与える代償としてギルバートがお前らに何を求めているか気付いていないのか?南部独立同盟に対抗することに異常なまでに執着していることを不思議には思わないのか?考えたこともないだろうな。折角の忠告もそれを聞き入れる器も真偽を判断する能力もない。仕方ないから機会は与えてやった。精々その不完全な頭で考えろ。俺からの通達はこれで最後だ、そして今日、俺はお前らに何も言っていないからな」
アドマスタは二人に口を開かせる暇もなく顎をくいと上に向けた。
「以上。出て行け」
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