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リレー小説第弐
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 彼女の名はゼノビア・ジェラルディーン。凍てつくような空気にコツコツと足音を響かせながら夜の街を歩いている。帰宅中というわけではない。寧ろその逆、これから仕事に向かおうというところなのだ。
 「もしもし、No.0021?私よ、そうNo.0047」
 彼女は携帯に接続したマイク付きイヤホンを耳に挿して話を始めた。人目を憚るように辺りを見回して、少し歩調を速める。人影どころか明かりさえないこの通りで誰かに姿を見られる可能性など皆無と言って良かったが、習性とは困ったもので周囲を警戒しながら歩くのがある種の癖になっているのである。
 「おめでとう、良かったじゃない。私にとって何よりの朗報よ。それと『アッシャー』だけど、ふうん……私は彼らに疑われている、というわけね。わざと他人の罪を引っ被って狙われる、っていうのも面白そうだけど、やめておくわ」
 ゼノビアは小さくクスッと笑った。女優のように美しくどこか棘のある笑みである。No.0047としての彼女の性質を最もよく表しているのがこの表情だと言えよう。
 「とにかく、私はそちらへ向かう。いいわよね、アル?」
 じゃあ後でね、と言って彼女は電話を切った。話していた彼、本名アルトゥール・ブラウアー、No.0021は、ゼノビアが「能力者」に「改造」されて研究所に送られた後に初めて打ち解けることのできた相手である。暫く研究所で被検体としての生活を送った後は、施設に住み込んでゼノビアと共に数々の仕事をこなしている。
 施設、それは政府が運営している彼らの隠れ家、活動拠点と言うべき場所である。常人離れした身体能力と膨大な知識を与えられた彼らが人間と共に暮らせる筈もなく、「能力者」の実験の開始と同時にこの施設は開かれた。


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