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死なない鳥(緋京)完
IV
翌日目を覚ましても頭にあるのは少女のことだけだった。その少女を探して昨日とは違う目的でその日もまた街を歩き続けた。二度目ともなれば慣れるもので人の波にもまれることもなかった。しかし少女に会えることの無いまま昨日と同じように日も沈みあたりは暗くなってしまった。
「やっぱ会えないか…。屋敷に行くしかないか」
路地裏をうろつきながら見たことのある道をたどっていくと人影を発見した。よく見ると少女のようなフードを被った人物。
「見つけた!」
あいつだ。こんな時間にあんな格好してるやつなんかほかにいない。
確信して声をかけようとしたときまたしても彼女は逃げていった。
「え、俺だって!待てって!」
例によって例のごとく少女はすぐつかまった。息も切らしている。
「なんか既視感が…。なんで逃げた?」
「追っ手かと思った…。で、また道に迷ったのか?宿屋はこの道を行けば着くぞ。」
「違う!ほらお前が昨日落としていったやつ。」
アーロンはポケットから昨日の羽根飾りを出した。
「なんかちょっと曲がってる気もするが…まぁいい。これを探してたんだ。礼を言うぞ。」
それだけ言って去ろうとする少女をアーロンはフードを引いて引き留めた。
「ちょっと待て。聞きたいことがいくつかある。とりあえずいつまでもお前ってのもな。俺はアーロン。お前は?」
「私はまだ質問に答えることに了承してないぞ。仕方がない。羽根飾りの礼だ。いくつかなら答えてやる。私の名はイロナ。何が聞きたいのだ?」
「まず不死鳥の話は本当なのか、本当ならいくつなのか、関わったらろくな目にあわないのか、関わるとおかしくなるのか、あとイロナの夢は何なのかとか…それと…」
「まだあるのか!?いくつかでは無いではないか!それにお前、私が不死鳥だって知らなかったのか?」
「山奥の狭い村にずっといたって言っただろう。村以外のことはあまり知らないんだ。イロナたち不死鳥についてもその一つだ。だから聞くことが沢山ある。」
「さすがに私も何時間も付き合うわけにはいかない。そろそろ帰らねばまずいしな。お前も宿屋に早く行かねば泊まれぬぞ。野宿は嫌なんであろう」
心配するイロナとは対照的にアーロンはそんな心配をしているそぶりもみせない。
「なんだ、泊まる場所はもう決めてあるのか。なら別に良いが…」
「いや決まってはいない。所持金は宿屋でほぼ使い果たした。もう一泊する余裕はない。」
「は?ならどうするのだ。野宿するのか?」
「イロナに会えればなんとかなるかなと」
アーロンの言葉に呆れて一瞬言葉が出なかった。
「こいつ、あほだ…」
アーロンの言葉に絶句したイロナだが思考回路をすぐに正し、考えを巡らせていた。
「よし、お前は教会に行って今晩泊めてもらえ。話せば泊めてくれるだろう。私の名は出すなよ。泊めてもらえなくなるかもしれぬ。分かったな。早く行ったほうが良い。教会のやつらも寝てしまうぞ。」
しかしそれにアーロンは気が乗らない様子だった。
「何か不満でもあるのか?」
「当たり前だ。一日中歩き回ってやっと見つけて話を聞く機会ができたのにそれをみすみす逃すわけ無いだろう。」
「そんなことか…。ならば明日のこれぐらいの時間にこのあたりで待っていてやる。それでいいだろう。」
「ずいぶんとアバウトな設定の待ち合わせだな…。だがお前はちゃんといるんだな?」
「質問に答えると言ってしまったしな。女に二言はない。分かったならさっさと行け。野宿になるぞ。道は大丈夫だな?」
「あんな目立つもん間違えるはずないだろ。それじゃまたな。」
二人はそこで別れた。アーロンは道に迷うことなく無事教会で一夜を明かした。

変わったやつだ。イロナは家路の途中そう思った。アーロンは私を恐れるでもなく、自分の欲のために利用するでもなく、ただ自分の知らないことを知りたいという理由で近づいてきた。長い間生きてきたが、あんなやつは初めてだ。おもしろい。あいつなら…いや、無駄な期待はするまい。それにしてもこんなに明日が楽しみなのは久しぶりだ。早く明日が来ないものか。



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あきゅろす。
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